ワークフロー図とは
ワークフロー図は、ワークフロー、ビジネス プロセス、または何らかの成果を生み出すために行う一連のステップを、最初から最後まで視覚的に表現したものです。リソースのフローや役割間の引き継ぎ、タスクの依存関係と所有権を図表によって表示します。
「ワークフロー図は、チームがどのようにアクティビティを実行して成果を上げるかを理解するのに役立ちます」と、Fraction ERP (フラクション ERP) のディレクター兼共同製作者である Giles Johnston 氏は言います。「ワークフロー図では個々のステップが強調表示されるため、[製造中] サイクル タイムや不具合の削減に役立ちます。究極的に、図表は生産性の向上に役立つことになります」。
ワークフロー図は複雑である必要はなく、紙やホワイトボードに簡単なスケッチをするだけで十分です。また、専用のワークフロー プラットフォームで描画された特別な記号を使用して、洗練された図面を作成することもできます。
ワークフロー図は、フローチャート、プロセス フローチャート、プロセス マップ、プロセス フロー図、またはプロセス ワークフロー図など、さまざまな名称で呼ばれることがあります。ワークフロー図はシステムの総合的な概要を示すものであると考える人もいますが、より詳細な内容を含むこともできます。
化学、製造、およびその他のエンジニアリング関連の専門分野をはじめとする多くの業界や企業では、ワークフロー図を使用して資材の流れや主要機器間の関係を示すことができます。ワークフロー図は、業務ユニットやシステムの概要を新入社員に説明するツールとしても役立ちます。
ワークフロー図の目的
ワークフロー図は、大規模なプロジェクトの基礎となるプロセスを視覚化する際に役立ちます。ワークフロー テンプレートによって連続的なステップを示すことができるため、エンド ユーザーは各ステップをより簡単に理解、実行、分析することができます。
さらに、各ステップを完了させる順序がワークフロー図によってわかるため、構造化された辿りやすい形式で特定のアクティビティを判断することができます。これらの図表では、プロセス内部の変更を簡単に識別して変更を加えることができるため、効率性が高まります。突き詰めると、ワークフロー図はプロジェクト管理から医療または建設に至るまで、ビジネスのあらゆるプロセスや分野に固有のプロセス要件を捕捉、視覚化、構築するきっかけになります。
ワークフロー図の構成要素
ワークフロー図の構成要素によって、ワークフローで何が起こるかに関する情報が伝達されます。すべてのワークフローには、インプット、変換、アウトプットが含まれます。ワークフロー図では、ボックス、線、矢印、およびその他の記号によってこれらの構成要素が表現されます。
- インプット: インプットとは、ステップやプロセスを完了させるのに必要なリソースです。インプットはワークフロー ステップのきっかけと捉えることもできます。インプットの例として、資材、スタッフ、資金、機械、データ、情報などが挙げられます。
- 変換: 変換とは、インプットがどのように変化してアウトプットを生成するかを表すものです。変換は、ワークフローの次のステップのトリガーとして捉えることができます。変換の例として、承認を得るために保険金請求書を転送する、芝刈り機を組み立てる、生データにアルゴリズムを適用するといった行為が挙げられます。
- アウトプット: アウトプットとは、入力が変換されたことによる結果です。状況に応じて、アウトプットは完成した芝刈り機といった最終製品になることもあれば、支払いプロセスを始めるためにスタッフが経理部門に転送する承認済みの保険金請求書など、別のプロセスのインプットになることもあります。
複雑なワークフロー図では、タスク、タスクの順序、判定ポイント、およびプロセスのフローが表示され、代替パスや再作業ループ、またはワークフローが前のステップに戻るポイントがマッピングされます。ワークフローにタスクやプロセスの所有権を記載することが重要です。
下の画像は、Atlassian JIRA でレンダリングしたワークフローの図表です。色付きの四角形はワークフローの各ステップを、線と矢印は辿る可能性のあるパスを表し、テキストは段階間の移行の種類を表します。
ワークフローの記号と図形
さまざまな状態やアクションを表すワークフローの記号と図形を使用して、図表を作成します。利用可能な独自の記号をすべて使う必要はありませんが、特定の図形を使用すると複雑なプロセスを一目で理解できるようになります。
業界によっては、専門分野に特化した記号をワークフローのグラフィックで用いる場合や、ボックスと接続矢印のみを使ってフローを描く場合があります。大半のチームはおよそ 5 つの記号を使用しますが、2 つか 3 つで十分な場合もあります。
頻繁に使用される記号を以下に挙げます。
- 楕円: この記号は、プロセスの開始または終了を示すために使用されます。
- 長方形: 通常、これはプロセス内のステップを示します。
- 矢印: 矢印は、プロセス パスまたはプロセス自体のフローの方向を示します。
- 菱形: これらの記号は判定ポイントを示します。
- ドキュメント: ドキュメント記号は、アウトプットまたはインプットがドキュメントやレポートであることを示します。例として、フォームの入力と送信、メモの作成、レポートの作成などが挙げられます。
組織では、ビジネスの各部門および各レベル全体でビジネス ワークフロー図を使用できます。そのため、記号や図形をカスタマイズする場合でも、全員が使用する標準的な表記システムを確立して明瞭さを保つ必要があります。
ワークフロー図の読み方
ワークフロー図を読む際は、まず図表のタイトル、記号キー、構成要素の ID 番号 (より複雑な図面の場合) を把握します。次にプロセスの開始地点を見つけ、矢印で示される論理的な順序を辿ります。
多くの業界では、図表は左から右に読むように形式化されています。新しいワークフロー図に取り組むときは、そのフィールドの特定のレイアウト ルールを理解する必要があります。
フローの方向を理解したら、記号を読みます (記号に関する記述をご覧ください)。専門分野に特化した記号については、その分野に関する国際標準化機構 (ISO)、ANSI、または ASME の記号規格を参照してください。
ワークフロー図の作成方法
いくつかの簡単なステップでワークフロー図を作成できます。まず、マッピングする主要プロセスを決定します。次に、簡単なスケッチを描きます。ソフトウェアは必要ありません。記号を描くためのペンと紙があれば十分です。
「正しい記号を使っているかどうか心配する必要はありません」と Johnston 氏は言います。「各ステップを忠実に、できる限り細部まで捉えることのほうが重要です。表記法について心配しても切りがありませんし、うんざりするでしょう。代わりに、矢印付きのボックスをいくつか描きましょう。必要なのは菱形かそれとも台形か、あるいは下部に波線が必要かどうかを心配するよりも、図表の作成プロセスに集中し、気楽に取り組めることのほうがはるかに重要です」。
チームが最終案に同意した後、正式なバージョンが必要な場合は、ワークフロー図を描画ソフトウェアまたはワークフロー自動化プラットフォームに転送することができます。
ワークフロー図を描く際は以下の手順に従います。
- プロセスを選択する: プロセスと、それを図表化する理由を理解します。
- プロセスに名前を付ける: 行為を表す動詞を用いる必要があります。
- 開始点と終了点を定義する: プロセスの境界線を設定します。「多くの企業は、プロセスの各部分をランダムにマッピングするという間違いを犯しています」と Johnston 氏は指摘しています。
- それぞれのタスクまたはステップを列挙する: 各ステップを順番通りに列挙し、その所有者を書き留めます。ディスカッションを行ったり、チームの合意を得たりするためのツールとなる簡単なスケッチを作成します。この最初のスケッチにサイクル タイムと稼働率を追加することを検討してもよいでしょう。Johnston 氏も、詳細がわからなければ改善の機会を失ってしまうため、1 つの大きなボックスで済ませるのではなく、小さなステップを含めるべきだと提案しています。
- 図面に以下の内容を記入する:
- 少なくとも 1 つの開始ノード (プロセスが途中でいきなり発生することはないため)。
- 少なくとも 2 つのタスク ノード (プロセスを作成するにはアクティビティが必要であるため)。
- 少なくとも 1 つの停止ノード (何事も永遠に続くことはないため)。停止ノードは、結果またはアウトプットを達成したかどうかをユーザーが判断する上でも役立ちます。
- 判定ノード (すべてのワークフローが線形であるとは限らないため)。多くの場合、ワークフローには「はい/いいえ」の選択肢と代替パスが含まれます。
- コネクタ (プロセスのさまざまなセクション間を移動する可能性がある場合に使用)。
- インターフェイス ノード (あるプロセスのアウトプットが別のプロセスのインプットになる場合に使用)。
- すべてのアイテムのラベル。
- 説明メモ (該当する場合)。
- ワークフロー プラットフォームまたはグラフィック プログラムで正式なワークフロー図を描画する:
- 図表の使用者と、使用者が求める詳細度と表示のレベルを考慮します。
- 外部の関係者がドキュメントを閲覧する場合、機密情報を記載してはいけません。
- 複雑なプロセス図やシステム図の場合は、重要なプロセスの線を濃い色で、重要でないプロセスの線を薄い色で描画します。
- 複雑な図表では、主要なワークフロー アイテムに番号を付けることがよくあります。
ワークフロー図の種類
ワークフロー図、プロセス マップ、フローチャートなど、使用できるワークフロー図にはいくつかの種類があります。これらの用語を同じ意味で使う人もいますが、明確な区別があります。さまざまな情報を表示するのに適した形式もあれば、特定のインサイトを明らかにするのに適した形式もあります。
ワークフロー プロセスをどのように図表化するかを決める際は、以下に挙げる各種のアプローチを検討してください。
- アクティビティ図: アクティビティ図は、結果または製品を生み出すのに必要な構成要素のステップを示すものです。これらの図では、統一モデリング言語 (UML) が使用される場合もありますが、単純な表記法を用いることもできます。
- 米国国家規格協会 (ANSI) 図: ANSI 図は、ANSI ワークフロー ガイドラインに基づいた記号で構成されています。ANSI 表記法はワークフローに関する最初の共通言語であり、エンジニアリング、電気/ガス/水道、機械、ソフトウェア、配管計装図 (P&ID)、および一般的なプロセス フローを表します。基本記号は他の記号セットと似ていますが、輸送、ファックスや電話によるデータ転送、およびスイッチなどのアイテムを表す特別な記号も含まれています。
- 基本フロー図: このタイプの図表は、単純なプロセスや推測に基づくプロセスを示したり、各ステップの時系列的な順序を理解したりするために使用します。このタイプの図表では、いくつかの基本的な記号のみが使用されます。
- ビジネス プロセス モデリング表記法 (BPMN): BPMN は、プロセス、データ フロー、およびシステムの大枠を表すものです。BPMN では正式な記号とレイアウトを使用して、技術的ユーザーであるかビジネス ユーザーであるかを問わず、チームや組織全体でプロセスを理解しやすくします。
- データ フロー図 (DFD): データ フロー図は、プロセスまたはシステムにおけるデータや情報のフローを示すものです。これらの図に判定ポイントは含まれません。
- プロセス フロー図: プロセス フロー図は、化学、製造、またはその他のプロセスを表示することで、主要な機器と資材のフローを示すものです。またプロセス フロー図により、組織の基本的なプロセスを描写したり、アクティビティの背景を提示したりすることもあります。これらの図表は単純なワークフローである場合もあれば、BPMN の正式ドキュメントである場合もあります。
- サプライヤー、インプット、プロセス、アウトプット、顧客 (SIPOC) 図: SIPOC 図は、ワークフローの重要なステップと、プロセスの所有者、インプット、およびアウトプット間の関係を表すものです。引き継ぎと頻度を把握するには、SIPOC にタイムラインを追加します。これにより、想定しているスケジュールと実行中の実際の作業を比較して示すことができます。
- スイムレーン図または部門横断図: スイムレーン図 (部門横断図とも) は、プロセスにおける各役割の機能と、あるプロセスがさまざまな部門間をどのように移動するかを示すものです。スイムレーン図では、余剰の役割とステップを表示できるほか、部門間で共有されているタスクとプロセスも明らかにできます。これらの図表は、ボトルネックや、プロセスの所有権を別の役割に移管すべきケースを特定するのに役立ちます。
- トップダウン図: トップダウン図は主要ステップのみを詳細に示すものであり、多くの場合詳細なフローチャートによってそれを補完します。
- 統一モデリング言語 (UML) 図: UML 図はコンピューター アーキテクチャで頻繁に使用されます。UML 図には 9 種類あり、それぞれが相互作用、オブジェクト、またはシーケンスなど特定の分野に焦点を当てています。
- バリュー ストリーム図: バリュー ストリーム マップは、製品を生み出したり、顧客向けに価値を加えたりするために、物品や情報がどのように流れるかを示すものです。これらの図表は、プロセス内の無駄やボトルネックを見つけるためのツールです。
ワークフロー図の例
ワークフロー図では、採用プロセス、計画の各段階、またはアプリのユーザー パスを表すことができます。以下に挙げるワークフロー チャートの例が示すように、ほぼすべての業界や事業でワークフロー図が役立ちます。
- アプリ開発者: アプリ開発者のワークフローでは、開発者が製品を生み出すために用いるステップが強調されます。この例では、ソフトウェア機能の動作の仕組みがワークフロー図によって示されています。
- 電子商取引: 電子商取引のワークフロー図では、顧客による発注と受領の過程が示されます。このワークフローには、オンライン注文または電話注文用の 2 つのパスと、商品発送用のパスが含まれています。
- 教育: 教育を対象とするこの例では、学生の登録プロセスを確認することができます。これは各役割のアクティビティを示すスイムレーン図です。
- 財務: この財務ワークフローの例では、従業員が新規購入のリクエストを送信する過程が示されています。フォームの作成時にドキュメント記号を使用し、意思決定ポイントと代替パスを示します。
- マーケティング: この概要ワークフロー図を辿ることで、マーケティング計画の作成と実施に関するステップの概要を把握できます。
- 医療: この医療ワークフロー図では、患者の入退院の各ステップが色彩豊かに表現されています。
- 新入社員研修: この例では、新入社員研修アクティビティのタイムラインがスイムレーン図によって示されています。この図表を辿ることで、必要なアクティビティ、タスクの所有者、タスクの順序を把握できます。
ワークフロー図が必要な理由
ワークフロー図は、最も単純なタスクの概要と詳細を示すものであり、ビジネス プロセスでは不要と思われることがあります。ただし、以下に挙げる重要な詳細を特定するのに役立つ極めて有用なリソースです。
- 各プロセスに適したチーム メンバー
- 改善の余地がある領域や、効率性を高めることが可能なプロセス
- データの収集または監視
- 承認プロセスと、承認を行う主要関係者
- 計画されているプロセス ステップに関するチームの調整
さらに、ワークフロー図を使用すると、非常に複雑で詳細なプロセスであっても理解しやすくなり、明快さと簡潔さが向上します。ワークフロー図は、企業とそのチーム メンバーが以下のことを行う上でも役立ちます。
- ステップ間のフローを示す。
- プロセスのあらゆる部分について定義、分析、議論を行う。
- プロセスを標準化し、プロセス内のギャップを見つけて特定する。
- 問題を特定し、ビジネスに価値を加えないプロセスを排除する。
- チーム メンバー間のコミュニケーションとチームワークを促進する。
- プロセスと、それに続く各プロセスについて、全員の認識を一致させる。
- プロセス、プロセスの実行を継続する理由、およびプロセスのビジネス価値を明確に理解できるようにする。
さまざまな理由から、ワークフローの使用を避ける人がいるかもしれません。その理由として、既存のプロセスを中断したくない、プロセスの完全な制御を維持したい、形式化された構造に従わない独自のプロセスを構築したい、といったことが挙げられます。
ただし、ワークフロー図を使用することで、固有のあらゆるプロセスに一貫性と効率性をもたらすことができます。それにより、チーム メンバーがプロセスを実行する際に、全体的により良く制御することができ、有効性が向上します。
ワークフロー図のメリット
ワークフロー図のメリットとして、効率性の向上やコストの削減などが挙げられます。ワークフロー図は、企業が無駄を減らしてプロセスを合理化するのに役立ちます。この効率化によって生産性が向上し、収益の増加につながります (企業はその収益をプロセスの改善に再投資できます)。
ワークフロー図は、企業の収益にプラスの影響を与えるだけでなく、以下に挙げる具体的なメリットをもたらします。
- ステップと順序を定義するのに役立つ
- 複雑なプロセスが簡素化される
- 効率が向上する
- 再現性が向上する (これは測定可能性と継続的改善にとって重要)
- 冗長性と無駄が減る
- コストが削減される
- プロセスが自動化される
- 問題にすばやく対応するのに役立つ
- プロセスの概要と複雑なステップを迅速かつ簡単に共有できる
ワークフロー図を使用するタイミング
ワークフロー図を使用すると、プロセスの概要を把握するだけでなく、問題を予測して防止することもできます。詳細なワークフロー図は、タスクを完了させ、作業を順調に進めるのに役立ちます。ワークフローに役割と責任の説明を含めることもできます。
さらに、ワークフロー図のプロセスを活用し、生産性を低下させる可能性のある不具合や遅延を予測して回避することで、ワークフローを改善することができます。また図表によって、排除や標準化が必要な隠れたプロセスも明らかになります。
ワークフロー図の用途
ワークフロー図はいくつかの点において役に立ちます。図表を用いることで、効率的な承認プロセスを作成したり、リソースや参加者をプロセス内のどこに割り当てるべきかを示したりすることができます。
前述のメリットに加えて、ワークフロー図は以下の点でも役立ちます。
- ワークフロー図によって、タスクの頻度と、各タスクを完了させるのに要する理想的な時間を特定する。
- 各プロセスのタスク手順、またはプロセス内の個々のステップのタスク手順を図表に記載する。
- 先行するステップの後に、自動または手動でワークフローを開始する。
- ステップまたはプロセスの完了後、承認を得るために主要関係者にドキュメントを送信したり、時間を効率的に使うために 1 回限りのレビューを作成したりする。
- 承認ステータスを設定し、承認が与えられた後にのみステップが実行されるようにする。
- 特定の時点か指定された日付まで、ワークフローを中断または停止する。
- ワークフローのステータスを設定し、関係するリソースに最新情報を送信する。
- ワークフロー内で直接ステップを更新し、効率を高める。
- プロセス、期限、所有者を追跡する。
- 「ドキュメント化されていない知識」を収集し、オンボーディングとトレーニングをサポートする。
- プロセスを分析して改善する。
ワークフロー図の分析方法
ワークフロー図を分析することで、プロセス内のボトルネックや無駄を特定できます。そのためには、不要なステップや足りないステップを見つけます。提案されたワークフローについては、アクションとフローの方向がすべて正しいことを確認します。
Johnston 氏は、分析がプロセスの改善に役立つ理由を次のように述べています。「これまで見た例で、巨大なチャートをマッピングした後、一歩下がって眺めたところ、いくつかのステップが間違った場所に配置されていることに気づいた、ということがありました。ワークフロー図を持つことで得られる本当のメリットは、一歩引いて『これにはもう意味がない』と言えることです」。
「私の場合、正式なワークフローとワークフロー マネージャーを活用してプロセスの確立を始める前に、プロセスの図表化に多くの時間を費やすと思います」と、Michigan Manufacturing Technology Center (ミシガン マニュファクチャリング テクノロジー センター) でリーン プログラム マネージャーを務める Scott Chaiken 氏は言います。「製造業に従事し、現場に目を向けているなら、バリュー ストリーム マッピングなどのリーン アプローチに時間を費やすでしょう。そこでは統合の方法を考える必要があります。『なぜここで二重チェックが必要なのか?なぜここに署名が 2 つあるのか?』と自問しましょう。バリュー ストリーム マッピングにより、多くのトランザクションが削減されます。ワークフローを確立する前に、そのワークフローから無駄を排除する必要があるかもしれません」。
既存のプロセスを分析する際は、それぞれのスタッフ メンバーが想定している内容の不一致を見つけます。仕事へのアプローチは人によって異なるため、明らかに問題や改善点だと思うものもあるでしょう。さらに、図表を作成した理由を考えましょう。一般的な改善点を探す場合とは異なる重要なポイントがあるかもしれません。
ワークフロー チャートの体系的なレビューを行う際は、以下のステップに従ってください。
- タイミング: ステップやプロセスにどれくらいの時間がかかるかについては、人によって意見が分かれるかもしれません。「『この時計はいつ動きだすのか?』と尋ねて回れば、おかしな答えが色々と返ってくるでしょう」と Chaiken 氏は言います。プロセスの各セグメントを見直して、問題を予測しましょう。
- 論理: イベントの順序が間違っていませんか?各ステップがどのように流れるべきかを自問してください。
- 遅延: バリュー ストリーム マップは、遅延や待機を示すのに適したツールです。しかし、他のフローでも時間の無駄が明らかになる可能性があります。
- ギャップと内訳: ワークフローの問題は、ボトルネック、不完全なインプットやアウトプット、同時に発生する可能性のある順序で実行されたステップ、不必要な依存関係、または一貫性のない作業量として現れます。
- 情報の欠如: ステップまたはプロセス自体に、ドキュメントや作業手順書が必要になる場合があります。
- 所有者の欠如: フローを継続してアウトプットを実現するのは、プロセスとステップの所有者です。責任の所在はワークフローにおける重要な情報です。Johnson 氏はこう説明します。「このような精巧な図表を作成しながら、ワークフローのさまざまな部分の責任者が誰なのかを把握していない人がいることに、本当に驚かされます」。
ワークフロー分析の詳細については、ワークフロー分析に関するこちらの記事をご覧ください。
ワークフロー分析チート シート
ワークフロー図を描いて見直すことで、インサイトを得ることができます。とは言え、引き継ぎや承認といった構成要素に注目し、ステップを分類する方法を理解すれば、さらに多くのことを認識することができます。
無料でダウンロードできるこちらのチート シートには、ここで専門家として紹介した Johnston 氏と Chaiken 氏によるワークフロー図分析のヒントが記載されています。これにより、図のどこを見るべきか、何を探すべきか、描画した結果をさらに掘り下げるにはどうすればよいかがわかります。
ワークフロー図、フローチャート、およびデータ フロー図の比較
ワークフロー図、フローチャート、データ フロー図は見た目こそ似ていますが、目的が異なる場合があります。多くの場合、ワークフロー図ではすべてのプロセスとその依存関係をマッピングし、フローチャートではステップやアルゴリズムを描写し、データ フロー図ではプロセスや組織におけるデータの移動を示します。
ワークフローは、フローチャートやプロセス マップを通じて視覚的に表現できます (ワークフローのグラフィック表現は単に図表と呼ばれます)。図表は、あなたとチームがワークフローのステップ、それらの発生順序、およびそれぞれの移行中に何が起こるかを理解するのに役立ちます。
フローチャートではさまざまな分野に特化した記号を使用して、ステップや移行を表すことができます。このグラフィック言語の最も洗練された表現は BPMN にあります。プロセス マップを使用すると、各ステップの要件に関する情報がさらに得られる場合もあります。
データ フロー図は、プロセスまたはシステム内のデータや情報のフローを示します。そこでは同じ記号とテキストを使用して、インプットと、宛先と保存ポイント間のパスを記述します。対照的に、データ フロー図には開始ポイントや終了ポイント、意思決定ポイントは含まれません。
ワークフロー図の歴史
ワークフロー図、またはフローチャートは、1921 年にフランク (Frank) とリリアン (Lillian) のギルブレス (Gilbreth) 夫妻によって初めて作成および導入されました。この最初の反復型チャートはプロセス フローチャートと呼ばれましたが、変化を重ねて現代的なワークフロー図へと進化しました。
ギルブレス夫妻はワークフロー図の概念を米国機械学会 (ASME) に導入し、それを『Process Charts: First Steps in Finding the One Best Way to Do Work (原題)』という書籍で詳細に説明しました。1930 年代初頭、米国の産業エンジニアであるアラン・H・モーゲンセン (Allan H. Mogensen) は自社のビジネスにおいてワークフローを一貫して適用するとともに、チーム メンバーにそれを教えました。モーゲンセンはワークフロー図とフローチャートを普及させたことから「簡素化の父」だと考えられています。
これらの功績により、フレデリック・ウインスロー・テイラー (Frederick Winslow Taylor) によって 1890 年代に始められた科学的管理法の概念がさらに発展しました。テイラー主義と呼ばれる科学的生産アプローチにより、経営に再現性と測定の概念が導入されました。科学的管理法の信奉者の 1 人に、米国のエンジニアでビジネス コンサルタントも務めていたヘンリー・ガント (Henry Gantt) がおり、彼はフローチャートの前身となる人気の手法、ガント チャートを 1910 年に導入しました。時間とアクティビティの関係を表すガント チャートは、現在でも主にプロジェクト管理で使用されています。
1950 年代には、機能の層 (レイヤー) を表す機能ブロック フロー図の開発が始まりました。当時、米国海軍は Program Evaluation and Review Technique (プログラム評価およびレビュー手法、PERT) チャートを導入しましたが、この「P」はプロジェクトを指すこともあります。米国国防総省が 1970 年代までに開発した IDEF 表記法は、防衛関連企業や軍の全部門で広く採用されました。ボトルネックを特定し、論理的思考を促すツールである IDEF 図は、オブジェクト指向であることに重点を置いているため、コンピューターのアーキテクチャを記述するのに最適です。
本来、ワークフロー図は製造や化学工学の分野で使用されていましたが、多くの業界で何らかの形態のプロセス図が採用されています。ソフトウェア工学の分野で最近開発されたものの 1 つに、UML があります。2004 年、Business Process Management Initiative (ビジネス プロセス マネジメント イニシアチブ) は、ビジネス プロセスを記述するための BPMN バージョン 1.0 をリリースしました。
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