顧客オンボーディングのプロセス
顧客オンボーディングとは、簡単に言えば、組織が新しい顧客を獲得するために使用するプロセスです。それは、企業が自社の製品やサービスの仕組み、ソリューションの価値、顧客との連携方法を説明する方法です。オンボーディングは優れた顧客サービスの本質的な要素であり、カスタマー ジャーニーの最初のステップです。最初のコンタクトから購入、そしてその後まで、あらゆるタッチポイントで適切に実行できれば、長く実りある関係の始まりとなります。クライアント ジャーニーに関する優れたヒント、チェックリスト、詳細情報は「The Definitive Guide to Client Onboarding (クライアント オンボーディングの決定版ガイド)」をご覧ください。
クライアントのオンボーディングを完了するのにかかる時間は、組織によって異なります。対面でのやり取りを通じてクライアントに直接販売する専門サービスの場合、プロセスの期間は約 90 日が目安です。クラウドで提供するソフトウェア (Saas) 企業の場合、特に 30 日間の無料トライアルを提供する企業では、最初のコンタクトからのプロセスにさらに時間がかかる場合があります。
顧客オンボーディングのメリット
オンボーディングを上手く管理することは、チームと顧客にとって有益です。まず第一に、顧客オンボーディングは収益を増加させながら顧客満足度を高めることで解約を減らします。適切に整理され、文書化された顧客オンボーディングは、部門や階級を超えたより効果的な共同作業を可能にし、組織全体で実用的な利益をもたらすため、やり取りのストレスが軽減され、生産性が向上し、従業員の満足度も高まります。
顧客オンボーディングのプロのご紹介
顧客は神であり、最新の顧客中心主義のトレンドは、これまで以上に高度なパーソナライゼーションを提供することです。販売前と販売後にポジティブな顧客サービス体験を生み出すことが、ブランドを競合他社より際立たせる鍵となります。高度な顧客オンボーディング戦略を使用してプロセスを開発する方法を学ぶために、このトピックについて 3 人の専門家に意見を聞きました。
Sacha Ferrandi 氏は、Source Capital Funding, Inc. (ソース キャピタル ファンディング株式会社) と Texas Hard Money (テキサス ハード マネー) の創設者です。サンディエゴを拠点とする両社は、設立 12 年目を迎え、テキサス、ミネソタ、カリフォルニア、アリゾナで不動産金融の専門家チームを擁しています。
Tabitha Jean Naylor 氏は、新興企業創業者が直面する今最も適切な質問に対する回答を提供するデジタル マガジン「Successful Startup 101 (サクセスフル スタートアップ 101)」の創刊者であり、新興企業や中小企業のためのマーケティング会社 TabithaNaylor.com のオーナーでもあります。
Angelique Pivoine 氏は、ブランディング戦略からメディア アウトリーチ、インバウンド マーケティング サービスまで、幅広いサービスを提供する総合マーケティング/PR エージェンシー、Good Thinking Agency (グッド シンキング エージェンシー) のオーナーです。Pivoine 氏は、MSN、HuffPost (ハフポスト)、NFIB、その他多数のメディアで取り上げられている専門家です。
この専門家たちとの会話で出てきた興味深いことの一つは、新規顧客が歓迎され、サポートされていると感じさせるためには、多くのすべきことがある一方で、すべきでないことを知り、それを避けることも同じくらい重要だということです。
3 人の専門家全員の意見が一致したのは、オンボーディングの最も困難かつ最も必要な側面の一つは、顧客を手放すタイミングを知ることだという点でした。これまで培った理解を活かし、自社の製品やサービスの価値を評価する顧客を維持することに重点を置きましょう。オンライン フォーラムで不満を表明する傾向がある、不満を抱えた顧客を引き留めて悪意を生まない方がよいのです。時間をかけて顧客にビジネスに対する感謝を伝え、必ず出口調査を実施してください。
顧客オンボーディングで避けるべきことチェックリスト
あらゆる製品やサービスにおいて、競争が激化する市場では、新規顧客を獲得するには多くの時間、労力、費用がかかります。そのため、苦労して築いた関係を断ち切ることは絶対に避けるべきです。
PricewaterhouseCoopers LLP (プライスウォーターハウスクーパース LLP) の調査によると、解約を防ぐための取り組みのほとんどは、購入プロセスの終盤に行われると効果がなく、顧客が離れる理由を理解し、実際のデータに基づいてできるだけ早くモデルを変更する方が利益が大きいことがわかりました。早期に開始し、情報で武装し、顧客対応に柔軟に対応する意欲を持つことで、解約を食い止めましょう。
以下は、カスタマイズされたオンボーディング プロセスを設計する際に考慮すべき、専門家による「すべきでないこと」です。
最適とは言えないオンボーディングがどのようにして顧客維持の失敗につながるかを見たので、次は実行できる前向きなアクションに移ります。
十分に活用されていない顧客オンボーディングのベスト プラクティスと戦略
顧客/ユーザー エクスペリエンスはビジネスの成功に不可欠なため、顧客のニーズや要望を理解し、購入 (およびさらなる購入) までのプロセスを簡素化する方法について、あらゆる手段を講じて理解することが不可欠です。ハーバード ビジネス レビューによると、アメリカの平均的な企業は 5 年ごとに 50% の顧客を失っています。その理由として、回答者の 3 分の 2 が、顧客ケアが不十分だったと答えました。同じ調査では、中小企業の 91% が既存顧客を維持するために何もしていないと回答しています。これでは競争の激しい時代に勝つことはできません。専門家たちは、顧客オンボーディング プロセスを開始または改善するのに役立つ、実証済みのベスト プラクティスのヒントを提供してくれました。
専門家による顧客オンボーディングのベスト プラクティス
Source Capital Funding (ソース キャピタル ファンディング) の Ferrandi 氏はこう述べます。「当社は顧客サービスに大きな誇りを持っており、すべての顧客に対してオープンで直接的かつ透明性のある対応を信条としています。取引を成功させるためには、しっかりとしたコミュニケーションが最も重要です」。彼が過去 12 年間で学んだ、オンボーディングに活用できる豊富な提案を紹介します。
- 最初の会議からカスタム チェックリストを作成する「クライアントや業界はそれぞれ異なるため、最初の調査会議の後に新しい顧客ごとにチェックリストを作成することが重要です。この会議を、システムに関するクライアントの知識の範囲を明らかにする大規模な Q&A として考えてください。クライアントは、システムがどのように機能するかをよく理解している場合もあれば、ほとんど経験がない場合もあります。この調査会議を実施するまでは、チェックリストを作成して時間を無駄にしないでください」。
- 個人的に受け止める「進行中のプロセスで顧客とやり取りしながら発見する単純なことが、顧客とあなたの成功に大きな違いをもたらす可能性があります。実際の優れた例として、パーム スプリングスの物件に取り組むクライアントと行ったプロジェクトがあります。最初のオンボーディング会議で、クライアントが 1 週間以内に当社のサービスを必要としていることが分かりました。この会議のおかげで、オンボーディング プロセス全体を迅速化し、クライアントのニーズの完全なチェックリストとスケジュールをまとめることができました。私たちはクライアントのスケジュールに合わせて作業し、プロジェクトを予定通りに完了することができました。この最初のオンボーディング会議がなければ、必要な情報や関係者のスケジュールをすべてこれほど迅速に把握することはできなかったでしょう」。
- 誠実であること「人がチェックリストに書き忘れる最大の項目は、サービスや製品に関する障害や問題を克服するプロセスです。連絡を取るべき担当者は常に存在しますが、時には間違いが起こることを認めたくないために、これらの問題点をどのように軽減できるかを説明することを忘れてしまう人が多すぎるのです。誠実でオープンであることは、どのようなビジネス関係を始めるにも最良の方法です」。
- 過負荷を避ける「最も重要な戦略は、あなたの助けなしにクライアントが読み、理解する責任がある情報をクライアントに提供しないことです。非常に詳細かつよくまとめられたプロセス文書があっても、クライアントが読まずに会議に出席し、特定の事柄を達成する方法を尋ねて、文書が無駄になっているケースを頻繁に目にします。Source Capital Funding ではプロセスの文書化を重視しています。必ず会議中のオンボーディング プロセスの一部として、または Web ベースのチュートリアル システムとして含めるようにしてください。事前にすべてを提示し、クライアントが質問がある場合に参照できる詳細なレポートを提供してください」。
- 簡単にカジュアルに「スムーズなオンボーディング プロセスを確実に行うための最良の方法の一つは、クライアントをランチ ミーティングに招待し、必要な書類を対面確認することです。食事を提供することは、クライアントに仕事の途中で時間を無駄にしていないと感じさせる素晴らしい方法であり、会議が堅苦しくなりすぎず、より多くの関係者が出席できるようになります。会議の議題を必ず設定し、リーダーを明確にしてください。そうしないと、オンボーディング プロセスが昼食の影に隠れてしまう可能性があります」。
- 顧客の都合に合わせて対応する「教授が学生のために『オフィス アワー』を設けるのと同じように、優れたオンボーディング戦略は、クライアントが質問や懸念事項について問い合わせることができる時間を提供することです。これにより、電子メールのやり取りでの待ち時間がなくなるだけでなく、クライアントのニーズにどれだけ熱心に取り組んでいるかが示されます。チームは必要に応じて電子メールや電話に応答できるようにする必要があります。このヒントは、複数のクライアントを持つチームがクライアントとの時間を整理するのにも最適な方法です。さらに、クライアントが読む必要のある書類や資料が大量にある場合、オフィス アワーを設けることで、長時間の対面ミーティングの必要性を減らすことができます」。
Successful Startup 101 の Naylor 氏は、スムーズなオンボーディングに不可欠だと考える、スタートアップ向けの貴重なベスト プラクティスを 2 つ挙げました。
- 短くシンプルに「オンボーディング チェックリストには、実りある仕事関係を築くために必要なものがすべて含まれていることが重要ですが、同時に、プロセスがクライアントの忍耐力を消耗させない程度に簡潔であることも重要です」。
- 解約を察知する「解約は、製品やサービスに不満を持ったために顧客やクライアントを失うことです。したがって、まず解約の主な原因 (間違った機能、不十分な機能、高価格、製品やサービスの使用の難しさ、価値の欠如) を理解し、解約を減らすための安全策をオンボーディング戦略に組み込むことが非常に重要です」。
Good Thinking Agency の Pivoine 氏は、PR/マーケティング業務の立ち上げ会議で使用する独自の顧客オンボーディング チェックリスト/アンケートを、フォローアップ アクションも含めて教えてくれました。
十分に活用されていない顧客オンボーディングのベスト プラクティスと戦略
顧客オンボーディング ウェルカム メール テンプレート
ほとんどの企業が顧客と連絡を取る方法の一つは電子メールです。以下は、ほとんどの製品やサービスに使用できる、新規顧客を歓迎するためのテンプレートです。
挨拶:
カジュアルに、そしてファースト ネームを使いパーソナライズしてください。
段落 1:
顧客を歓迎し、参加への感謝を述べます。
あなたの会社、あなたの使命と、どのように顧客の成功を支援するかについて説明します。
段落 2:
顧客が成功するために次に何をすべきかを説明します。
役に立つヒントを提供します。
CTA/ダウンロードを含むランディング ページ/開始ページへのリンクを提供します。
段落 3:
質問への回答やサポートの提供を申し出ます。
そのためのリンクを提供するか、最良の方法を説明してください。
締めの挨拶:
親しみやすく、簡潔で、個人的な内容にしてください。
連絡先またはチーム名を追加します。
良いスタートを切ったら、フィードバックを得てコミュニケーションを継続し、関係とオンボーディング プロセスを改善してください。
高度な SaaS 顧客オンボーディング チェックリストと戦略
SaaS オンボーディングに関するヒントについて Naylor 氏に尋ねたところ、次のように述べました。「SaaS オンボーディング戦略のチェックリストは、ビジネスの成功に不可欠です。SaaS 企業が犯す最大の間違いの一つは、オンボーディング チェックリストを作成するときに解約を考慮しないことです」。
Naylor 氏はさらに次の 2 つの点を指摘しました。
- 同じ認識を持つ「成功するための基準を確立することが非常に重要です。それはどういう意味かというと、シンプルに、クライアントや顧客に、どのようなサービスを、どのように、いつ提供するのかを伝えるということです。目標を明確に定義することで、成功を達成するのがはるかに簡単になります。ちなみに、あなたの目標がクライアントの目標と一致していない場合は、オンボーディング プロセスでそれが明らかになり、同じ認識を持つための時間が与えられます」。
- 無料トライアルの効果「多くの企業がチェックリストに入れるのを忘れているものがありますが、それは特に SaaS 企業に当てはまります。それは無料トライアルです。考えてみてください。あなたが販売しているのはソフトウェアであり、顧客が安心するまでに数日間「試用」する必要がある製品です。したがって、3 日間、7 日間、または 30 日間の無料トライアルを提供することで、顧客に多大な価値を提供することができます。なぜなら、製品が十分な品質であれば、そのトライアルは実際には 7 日間の無料価値であり、顧客はそれを数か月、数年分の価値に変換したいと考えるからです」。
Pivoine 氏は、SaaS クライアントとの経験に基づいて、SaaS の顧客をオンボーディングする際に必ず行うことが 2 つあると述べています。
- 期待を設定する「本当に解決できる場合を除いて、そのソフトウェアが顧客のすべての問題を解決するとは言わないでください。ここでは顧客の期待を高くしすぎないようにしましょう。覚えておいてください。オンボーディングは営業ではありません。あなたが行うのは、顧客のニーズを現実的に把握し、適切なソリューションを提供することです」。
- 顧客が新製品を探している理由を理解する「クライアントが以前のソフトウェアに満足していなかった理由 (インターフェース、学習曲線、サービス サポートなど) を (詳しく) 調べます。これらすべてを書き留め、ユーザー トレーニング中にこれらの特定のトピックについてクライアントに確認することを忘れないでください。そうすれば、あなたに対する彼らの信頼と自信が築かれます。あなたのソフトウェアで問題を抱えていたクライアントの例と、それらの問題にどのように対処して解決したかの例をいくつか用意して、点数を稼いでください」。
専門家からのすべての情報を基に、SaaS オンボーディング戦略に考慮すべきアイデアをいくつか紹介します。
さらに、こうした顧客とのやり取りにより、多くのデータを収集することも可能になります。
顧客オンボーディング ツールとソフトウェア
オンボーディング プロセス中に顧客データを収集し、優先順位をつけて役立つようにするにはどうすればよいでしょうか?クラウドベースのツールとソフトウェアは低コストで柔軟性があり、共同作業の顧客オンボーディング作業を管理および自動化する方法を提供します。
専門家は、主要業績評価指標 (KPI) の使用があなたとあなたの顧客の成功を測定するために有用であると指摘しています。適切なツールを使用することで、摩擦を特定して迅速に修復することができ、さらに最も重要なことに、それをチームと共有することができます。Service Source が調査した顧客オンボーディングの KPI には、顧客の価値実現までの時間、アクティブ化率、採用率、製品/機能の利用率スコア、拡張予約、純新規予約、維持率などがあります。
KPI 分析ダッシュボードを使用すると、時間と複数の変数を比較して傾向を把握できます。顧客エンゲージメント ダッシュボードの例を次に示します。
また、Smartsheet のようなカスタマイズ可能なツールを使用して、成功するための顧客ニーズとして特定したものを追跡および分析することもできます。
オンライン ツールを使用してオンボーディング プロセスを文書化して追跡し、チーム メンバーと共有して、KPI と照合しながら改善点を確認します。
視覚的に優れたツールは、チーム内や顧客との共同作業を促進するのに適しています。
Smartsheet で効果的な顧客オンボーディングを実現し、ROI を向上
ニーズに合わせ変化に対応できるようデザインされた、柔軟性のあるプラットフォームで、チームの能力を最大限に引き出しましょう。 Smartsheet プラットフォームなら、いつでもどこでも簡単に作業の計画、保存、管理、およびレポート作成が可能なため、チームはより効率的かつ効果的に仕事を進めることができるようになります。作業に関して主要なメトリックを表示したり、リアルタイムの可視性を提供したりするために、ロールアップ レポート、ダッシュボード、および自動化されたワークフローを作成する機能も装備されており、チーム メンバーをつないで情報共有を促進することが可能です。 やるべきことを明確にすると、チームの生産性と作業達成能力が向上します。ぜひこの機会に Smartsheet を無料でお試しください。