キャパシティ プランニングとは?
キャパシティ プランニングとは、プロジェクトに十分なリソースがあるかどうかを情報に基づき把握した上で意思決定を行う機能です。キャパシティ プランニングの目標は、サービス提供を最適化し、サービス レベル契約 (SLA) を満たすことです。
キャパシティ プランニングが重要な理由
キャパシティ プランニングは、全体的な顧客満足度を高めるために重要です。このプロセスでは、キャパシティ データを分析し、チームの生産性を維持して、プロジェクトのスケジュール遅延や予算超過が発生しないようにすることで、ビジネスは現在のキャパシティと将来の需要を一致させることができます。
キャパシティ管理を専門とする独立コンサルタント兼作家のリチャード・ギマーク (Richard Gimarc) 氏は、キャパシティ プランニングの重要性について以下のように述べています。「企業が顧客にサービスを提供している場合、キャパシティ プランニングを使用すると、顧客に応答性の高いサービスを提供し、そのレベルのサービスを提供するために必要なデジタル インフラストラクチャのコストを確実に理解できるようになります。」
キャパシティ プランニングのメリット
キャパシティ プランニングは、チームが取り組んでいる業務、スキル セット、利用可能性に対する透明性を提供します。キャパシティ プランニングのメリットの 1 つは、チームが期限内に予算内のプロジェクトを遂行できる点です。
キャパシティ プランニングのメリットの上位 4 つを以下に示します。
- コスト削減: キャパシティ プランニングは、リソースを活用する最も費用対効果の高い方法を特定するのに役立ちます。
- リソースの利用可能性: キャパシティ プランニングは、組織が人的リソースと IT リソースの両方の要件を満たす、最も費用対効果の高い方法を特定するのに役立ちます。
- スキル インベントリのチェック: チームが戦略的イニシアチブを遂行するために必要なスキルを持っていることを確認します。
- 人材獲得: データに基づき人員配置の意思決定を行うことで、重要な人材ギャップに迅速に対処できます。
ギマーク氏は以下のように述べています。「理想的な環境では、キャパシティ プランナーはビジネス パートナーと協力して、ビジネス需要がデジタル インフラストラクチャの利用可能性と拡張性に与える影響を予測し、サービス提供を最適化し SLA を満たす最も費用対効果の高い方法を決定します。キャパシティ プランニングは、対象となるビジネス プロセスについて真実を伝える唯一のソースです。」
彼は次のような例を提示しています。「SLA とアプリケーションの利用可能性をサポートするデジタル インフラストラクチャはどの程度機能しているのか、ビジネス需要に基づいた場合、将来像はどうなるのか、デジタル インフラストラクチャの限界点が近づいているのか、新しいビジネス サービスを導入しているのか、通常のビジネスを続けられているのか、などです。」
キャパシティ プランニングに関する 4 つの重要な考慮事項とは
キャパシティ プランニングには、ビジネス、アプリケーション、IT、設備の各チーム間の共同作業が必要です。これらの各サイロ間でのコミュニケーションは、大きな課題になる傾向があります。
調査文献の『 The Language of Capacity Planning: Business, Infrastructure, and Facilities』の中で、ギマーク氏と 451 Research Advisory Services (451 リサーチ アドバイザリー サービス) の元グローバル プラクティス プリンシパルであるエイミー・スペルマン (Amy Spellman) 氏は、キャパシティ プランニングを促進し、コミュニケーションの統合におけるキャパシティ プランナーの役割の重要性について話し合う際に考慮すべき 4 つの重要なサイロについて説明しています。
「今日のキャパシティ プランナーは、ビジネス オーナー、アプリケーション チーム、インフラストラクチャ グループ、設備を含む、エンタープライズのデジタル インフラストラクチャのすべての領域と連携する必要があります。ある意味で、これは良いニュースです。キャパシティ プランナーは、計画と調整の中心的な窓口として、費用対効果の高い方法でビジネスの需要に対応するため、デジタル インフラストラクチャの範囲と深度に十分な容量を確保するのに適した地位に就いています。」
キャパシティ プランニングを管理する方法
キャパシティ プランニングは、サイロ化された 1 回のみの活動ではなく、集団で継続的に行うものです。キャパシティを管理するには、ビジネス目標と将来の成長に関するインサイトが不可欠です。成功するには、データを継続的に測定、分析し、将来の計画を予測する必要があります。
「キャパシティ プランニング グループはビジネスのためのものです。売上など、収益に直結するビジネス ラインから始めることを検討してください。」と、ギマーク氏は提案しています。「キャパシティ プランニングを管理する最善の方法は、あなたと協力してくれるビジネス オーナーに焦点を当てることです。ビジネス オーナーに参加してもらい、そのビジネス ラインに固有のメトリックとインフラストラクチャを検討します。」
キャパシティ プランニングに関わるステップは何か?
キャパシティ プランニングは、コストのかかるミスを最小限に抑えます。チームはまず現在のキャパシティを測定することから始め、需要を予測し、ギャップを分析して、将来の計画を立てることができます。
- 現在のリソースのキャパシティを測定する: 現在のリソースのキャパシティを計算します。人材のキャパシティを決定するには、作業期間中の時間数にリソースの数を掛け、勤務外の時間の量を差し引きます。
- 期待される需要の予測: 各プロジェクトのリソースのニーズに対し、根拠に基づく見積もりを行います。需要を予測するために過去の需要に依存している組織もありますが、今日の予測分析ソリューションでは、需要に大きな影響を与える可能性のある未知の変動要素を考慮しています。
- キャパシティ要件の分析: 最初の測定値を使用して、予測された作業を完了するために必要なリソースがあるかどうかを評価します。これは、現在のキャパシティと予想される需要の差を計算するスプレッドシートやその他のツールで行うことができます。
- キャパシティと需要の調整: チームが予想される需要を満たせない場合は、キャパシティ プランニングのスプレッドシートやツールを使用して、チーム メンバーの追加、残業、シフト作業がプロジェクトの完了に役立つかどうかを判断します。
これらのキャパシティ プランニング テンプレートを使用して、キャパシティを測定、予測、分析します。
キャパシティ プランニングの例
キャパシティプ ランニングは、人材、生産ツール、IT リソースの計画に役立つため、業界や会社の規模に関係なく価値のある手法です。以下は、新しいプラクティショナー向けのワークシートです。
Method (メソッド) のシニア アジャイル コンサルタント兼ソリューション エンジニアのニコール・アイヒ (Nicole Eiche) 氏によるアジャイル キャパシティ プランニング ワークシートの例を使用して、チームのキャパシティとイテレーションの負荷のバランスを取り、チームとしての迅速さを達成します。アイヒ氏は、チームに「それぞれのイテレーションを開始する前にイテレーション プランニングを実行すべきです。チームが対応できるバックログの量に基づき、目標を決定するのです。」と提案しています。
キャパシティ プランニングの種類
企業はキャパシティ プランニングを使用して、プロジェクトの需要に合わせて重要なリソースを確保できます。一般的なキャパシティ プランニングの種類をいくつか次に示します。
- 製品: 製品キャパシティ プランには、成果物要件を満たすために十分な製品を確保することが含まれます。
- 労働力/チーム: 効果的な労働力キャパシティ プランを設定すると、プロジェクトに適切なチーム メンバー数と勤務時間数を確実にスケジュールできます。
- ツール: ツール キャパシティ プランを使用すると、プロジェクトに必要なツールを確実に用意できます。
- 要件: 能力所要量計画 (CRP) は、キャパシティの制限やレベルの確立、測定、調整に役立ちます。
- アジャイル: アジャイル キャパシティ プランニングは、チームが今後のスプリントで利用できる生産的な時間数を決定するのに役立ちます。このテンプレートのまとめには、 アジャイル キャパシティ プランニング テンプレートがあります。
- IT: IT のキャパシティ プランニングには、コストとキャパシティのバランスを取り、次に需給のバランスを取ることが含まれます。
- ITIL: ITIL サービスのキャパシティ プランニングは、合意されたサービス レベルの目標を予算内かつ期限内に提供することを目指しています。
- ラフカット生産能力計画: ラフカット生産能力計画 (RCCP) では、マスター生産スケジュールの要件を満たすのに十分なキャパシティがあることを確認します。
プロジェクト管理のキャパシティ プランニングとは?
プロジェクト管理キャパシティとは、特定の期間内にリソースが生産または達成できる最大量を指します。プロジェクト管理のキャパシティ プランニングは、コストを最小限に抑えながらキャパシティを改善することを目指し、需要に合わせてリソースを調整することを目的としています。
キャパシティ プランニングとリソース プランニングの違い
キャパシティ プランニングとリソース プランニングはそれぞれ関連しており、補完し合うものです。キャパシティ プランニングは、将来のリソースの必要性とリソースのキャパシティのバランスを取ります。リソース プランニング プロセスは、プロジェクトやプログラムの要求に合わせて人員とチームを割り当てる機能を備えています。
詳細については、こちらの「リソース プランニングの究極のガイド」をご覧ください。
キャパシティ プランニングのベスト プラクティス
企業は、特に利用可能なリソースがプロジェクト作業の要求を満たしていない状況が続く場合、キャパシティ プランニングのメリットを活用できます。適切な計画を立てるには、まず現在のキャパシティと将来の需要を把握する必要があります。業界の専門家は、実務経験から以下のようなアドバイスを提供しています。
Project & Team (プロジェクト & チーム) の主任コンサルタントであるシンディ・ヴェナップス (Cindy VanEpps) 氏は、キャパシティ プランニングはチームとして行うべきだと提案しています。「キャパシティ プランニングは、単に各チーム メンバーによる見積もりを追加するだけのことではありません。見積もりと、同じ製品や結果に焦点を当てたパフォーマンスの高いチームの構築を組み合わせることで、チームの共同作業と、阻害要因の特定に役立つのです。」
ヴェナップス氏は、ドナルド・G・ライナーツェン (Donald G. Reinertsen) 氏の著書 『The Principles of Product Development Flow: Second Generation Lean Product Development 』(製品開発フローの原則: 第 2 世代のリーン製品開発) から、以下のように引用しています。「製品開発プロセスをほぼ限界まで利用して運営するのは、経済的災害と言えます。」
ヴェナップス氏はこの発言に対し、「ライナーツェン氏の言うとおりです。100% のキャパシティで計画することは経済的災害です。チームは、学習することで作業を十分に理解し、発生する変動要素についての説明責任を果たす必要があります。より小規模で管理しやすい単位で作業することで、チームは変動が起こる可能性を許容することができます。」
キャパシティ プランニングのその他のヒントは次のとおりです。
- ビジネスの調整: 仕事とビジネス目標を一致させ、チームが最も重要なことに集中できるようにします。
- チームの予測: 役割ベースの計画を立て、有意義なチームワークを生み出すために、チーム レベルで全体の需要を予測します。
- 現在のキャパシティを理解する: 現在のキャパシティを分析して計画し、現在および将来の要件をより正確に満たすことができるかどうかを把握します。
- 可能性のあるシナリオを評価する: シナリオ プランニングにより、組織の戦略的目標に合わせて、投資と作業の種類を最も価値のある形で組み合わせることに集中できます。
- 集中を阻害する要素を考慮する: 集中を阻害する要素が混入することに注意します。一貫した監視体制は、チームが重要な作業に集中し続けるのに役立ちます。
- 変化を予測する: 多くの場合、不正確な見積もりの結果として起こる変化を見込んで、下方修正を行うことを予測します。ワークロードを安定させ、ボトルネックを回避するために、定期的にリソースの再割り当てを行う必要があるかもしれません。
- 継続的計画フロー: 変更は避けられないため、継続的な計画が必要です。キャパシティ プランニングも先を読んだプロセスとする必要があります。
- 積極的な計画: マルチタスクの削減、集中を阻害する要素の最小化、プロセスの合理化に積極的に取り組み、生産性を向上させます。
キャパシティ プランを作成する際に回避するべきミス
過去の情報やビジネス インサイトが不足していると、インテリジェントな意思決定に必要なデータをキャパシティ プランナーが入手できなくなります。そしてデータなしでは計画が失敗します。以下では、業界の専門家が、キャパシティ プランを作成する際に回避するべきミスについてのアドバイスを紹介しています。
Computer Measurement Group (コンピューター メジャーメント グループ) の地域責任者兼インターナショナル オフィサーのジョアン・ナタリーノ・デ・オリベイラ (Joao Natalino De Oliveira) 氏は、スタートアップ企業で最初に確認したミスは、キャパシティ プランを構築できなかった点だと言います。「スタートアップ企業の 85% は、需要の分析と計画を行わないために失敗しています。」と彼は言います。「大企業には専任のキャパシティ プランナーがいます。こういった企業は、初期段階ではピーク時を支えるため、大型のサーバー群とディスク サブシステムで作業することを好んでいました。サービスが停止する事態を何度か経験した後、彼らはキャパシティ プランニングに目を向けたのです。」
彼は具体例を挙げています。「私は多数のクラウド リソースを持つデジタル銀行を訪問しましたが、専任のキャパシティ プランナーはいませんでした。その銀行では、コストが上昇していることがわかってきました。彼らは、割り当ての改善を中心業務とするキャパシティ プランナーにより、大幅な改善を実現しました。」
業務をサイロ化したまま行うという事態も、回避可能なミスの 1 つです。ギマーク氏は以下のように述べています。「キャパシティ プランニングは、ビジネス、アプリケーション、IT、施設の各チームが交流するポイントである必要があります。もう 1 つのミスは、テクノロジーの進歩を無視することです。キャパシティ プランナーは、一時的なドキュメントや旧式化したフロー図に依存するのではなく、観測可能な情報を使用する必要があります。最後に、キャパシティ プランナーは、ビジネス部門の言葉を、アプリケーション、インフラストラクチャ、設備部門で理解しやすい適切な言葉に変換する必要があります。」
回避するべきその他のミスには、以下が含まれます。
- 過去のデータがない: 常に、現在必要な情報だけではなく、過去の情報も収集するようにします。
- ビジネス目標を理解していない: 組織のキャパシティをしっかりと理解することが重要です。
- 変化の影響を理解していない: 小さな変化であっても重要です。従業員のストレスを最小限に抑えるため、慎重に計画を立てます。
- タイムラインと範囲を適切に定義しない: タイムラインと範囲の両方をしっかりと把握することで、時間と予算を超過するリスクを回避できます。
キャパシティ プランニング戦略
キャパシティ プランニングには、主に 4 つの戦略があります。キャパシティの最適化に役立てるため、遅延型、先行型、一致型、変動型のアプローチを選択します。
各戦略の仕組みを次に示します。
- 遅延型: 実際の需要が観測可能になった場合にのみキャパシティを追加します。
- 先行型: 製品の需要が高まることを予測してキャパシティを追加します。
- 一致型: 予想される需要のシグナルと、現在の製品の市場におけるポテンシャルに合わせて、少量のキャパシティを追加します。
- 変動型: キャパシティ プランニングに対する予測主導のアプローチで、事前の生産調整も含みます。
2021 年以降のキャパシティ プランニング
顧客の需要を予測し、管理するための適切なリソースを所有することは、新しい概念ではありません。キャパシティ プランニングは、これまで以上に重要になっています。幸い、AI ツールが利用可能になったことで、正確に請求書を作成し、最適なスタッフを配置して、将来のプロジェクトに対し効果的に計画を立てることができるようになりました。
キャパシティ プランニングに向けた現代のツールにより、プロジェクト、リソース、チームの可視性を高め、ワークロードの効果的な優先順位付けと管理が実現できます。ギマーク氏は、キャパシティ プランニングという言葉が変わる可能性もあると言います。「キャパシティ プランニングおよびキャパシティ管理という用語が使われるようになったのは 50 年前です。この用語は、必ずしも肯定的には受け入れられませんでした。」
将来の展望について、デ・オリベイラ氏はこう述べています。「近い将来、キャパシティ プランニングとは、IT の荒野において資金を節約し、生き残り、勝利することを意味するようになるでしょう。」彼は、キャパシティ プランニングの自動化において、AI、深層学習、機械学習がさらに使われるようになると予測しています。「キャパシティとキャパシティ プランニングをターゲットとするビジネス アプリケーション類は、メインの分野から他のプラットフォーム、さらにはエッジ コンピューティングまで拡大し続けるでしょう。」
キャパシティ プランニングで使用するツール
専門家は、キャパシティ プランニングのための絶対的な標準ツールはないと主張しています。キャパシティ プランニングは旧式化しており、時代遅れだと考える人もいます。ここでキャパシティ プランニングに一般的に使用される 3 つのツールを紹介します。カンバン ボード、クリティカル パス、ガント チャートです。
- カンバン ボード: カンバン ボードは、ワークフローを追跡することで進捗を視覚的に表示し、無駄を削減します。カンバン ボードは、チームが担当しているタスクの数を示すため、キャパシティ プランニングにも役立ちます。
- クリティカル パス: クリティカル パスの手法は、サービスまたはサービス グループをサポートするために必要なコンピューティング キャパシティを決定します。このツールは、重要なアプリケーションのパフォーマンスとキャパシティ要件の分析に役立ちます。
- ガント チャート: ガント チャートは、プロジェクトのスケジューリングとタスク情報の概要を計画するための棒グラフです。チャートを Google スプレッドシートに接続します。このツールはデータを取り込み、情報共有、共同作業、他の人とのディスカッションのために表示します。
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