【徹底解説】工数管理とは?メリットから活用事例までご紹介

By Kate Eby | 2020年8月20日

業務が複雑化、多様化している現代、IT業界とどまらず、様々な業界でプロジェクトマネジメントのナレッジが求められています。プロジェクトマネジメントで重要なのは、プロジェクトの計画を立て、プロジェクトが進んでいく中で計画と乖離がないのかを確認しながら調整していくことです。このときに必要となるのが工数管理です。本稿では、工数管理とは何か、工数管理の方法、工数管理を行う上で有効なツールをご紹介します。ぜひご参考にしてください。

工数管理とは?

 

工数とは、プロジェクトにおける業務量の単位です。算出方法は、「1つの作業にかかる時間」×「作業に取りかかる人数」や「プロジェクト全体にかかる作業量」÷「スタッフの人数」で算出でき、プロジェクトの大小により人月・人日といった単位で表します。従来は、システム開発や製造の分野で使用されていましたが、様々な業界でプロジェクトマネジメントが必要になり、幅広く使われています。

工数管理は、プロジェクトでどの程度工数が必要なのか算出したり、進捗状況を把握するために工数を管理することを指します。例えば、あるプロジェクトが3つの作業で構成されており、それぞれの1つの作業あたり10人が30日作業する必要があるとします。その場合、プロジェクト全体で工数が90人日必要と把握でき、そのためにどの程度の予算が必要なのかも計算できます。このように、工数管理を行うことでプロジェクトに必要な予算や人員の算出や進行管理に利用できます。

工数管理の3つのメリット

工数管理を行うことのメリットは何でしょうか。ここでは、工数管理のメリット3点をご紹介します。

コストが把握できる

工数管理を行うことのメリットの1つはコストの把握ができることです。プロジェクトにかかる工数を算出することで、クライアントに見積を行う際の参考になります。また、プロジェクト全体の収益を把握し、継続の可否を判断する材料になります。

作業進捗が把握できる

工数管理は、進捗状況の把握にも活用できます。現在の作業に、何人が、それぞれ何時間かけて作業を行っているのか把握することができます。計画の工数と乖離がある場合は、早めに調整・対策することで、プロジェクトの遅延を防ぐことができます。

PDCAの実施に活用できる

1つのプロジェクトを完了した際、効果測定や振り返りを行う余裕がないまま、次のプロジェクトに移行してしまうことはありませんか?もしそうであれば、プロジェクトの終了後に、PDCAを回す時間を確保してみるのも良いでしょう。毎回のプロジェクトから改善点を得ることで、次のプロジェクトの質を高めることができます。

何のために工数管理が必要なのか?

ここまでは工数管理のメリットをご紹介してきましたが、工数管理は何のために必要なのでしょうか。ここでは、工数管理を行う代表的な目的をご紹介します。

プロジェクトの生産性向上

1点目は、プロジェクトの生産性の向上につながるため、結果的にプロジェクトの成功に繋がるという点です。工数管理を行わない場合、プロジェクトで計画通りに進んでいない箇所を特定するのが難しくなり、プロジェクトの遅延や、納品物の質の低下に繋がる可能性があります。しかし、工数管理を行うことで、プロジェクトに適切な予算・人員・スケジュールを把握でき、現実的なプロジェクト進行が実現できます。

チーム内のコミュニケーション効率向上

 

2点目は、チーム内におけるコミュニケーションの効率化です。プロジェクトが進むにつれて、多数のチームで異なるタスクを同時に進めていくため、進捗状況にばらつきが生じることも多いでしょう。

工数管理で作業状況を各チームが報告し、情報を一元化することで、進行状況を把握することができるため、もし遅れているチームがあった場合、そのチームの人員を増やすといった対策を立てることができます。プロジェクトマネジメントでは、チームのマネジメントも重要なスキルです。工数管理を行うことで、お互いの現状を把握するきっかけとなるため、チーム内のコミュニケーションのきっかけにもなります。

プロジェクト単位での収支確認

 

3点目は、収支管理のために行うということです。企業や事業を行う上で、利益を出すことが重要な目的の1つです。例えば、企業の場合、企業全体としての収益は把握できていても、各事業毎、プロジェクト毎の収益を把握できていないケースがあります。その理由として、人件費をプロジェクト毎に落とし込めていない可能性が考えられます。企業はプロジェクトの集まりでもあり、収益を改善するためには、プロジェクト毎の収益の管理が必要となります。

そこで有効なのが、工数管理です。工数管理を実施することで、各プロジェクトに何人が、それぞれ何時間ずつ関わったのか把握することができ、プロジェクトの収益性を把握できます。このように、工数管理は単なるプロジェクト進行だけでなく、経営の面からも有効です。

工数管理の方法とは?

工数管理は大きく分けて、「計画」と「実行・監視」の2つのプロセスに分かれます。本章では、それぞれのプロセスの進め方をご紹介します。

計画(工程表の作成)

プロジェクトマネジメントの最初のステップは、「計画」です。必要なスタッフの人数と、作業時間を算出することで、リソースの効果的な配置や予算の確保ができます。そのために、まず行う必要があるのが工程表の作成です。

工程表の作成するために、まずはプロジェクト全体の作業の割り出しが必要です。例えば、システム開発の場合は、企画・設計・開発・テストの各段階に分けるなど、プロジェクトに必要なステップを、過去のプロジェクトを参考に洗い出しましょう。

プロジェクト全体の作業を割り出したら、各作業にどれくらいの作業時間が必要なのかを算出します。この際、完璧な計画を立てる必要はありません。プロジェクトは進行していく中で変更していくものです。そのため、完璧な計画ではなく、しっかり全体を把握できるレベルを目安にしましょう。

それぞれの作業と、それにかかる時間が割り出せたら、割り当てるスタッフを検討します。スタッフは役職や役割によって人件費が異なります。全体の予算を意識しながら、プロジェクト全体に関わる人員と、特定の作業にのみに関わる人員を区別して、割り当てましょう。また、プロジェクト発足時に、責任者を明確にしておくことで、プロジェクトの意思決定がスムーズになります。

実行・監視

プロジェクトを計画通りに進めるには、プロジェクトを細分化し、プロセス毎に管理することが重要です。工数管理を行うためには、作業に関わっているスタッフ全員に日々の工数を入力して貰う必要があります。プロジェクトマネージャーは、入力されたデータを元に計画とのズレを把握した上で、必要であれば計画の変更など、対策を施します。工数管理は、現場の進捗を確認し、計画のズレをチェックすることで、プロジェクトを成功に導くことに繋がります。工数管理を実行していくために重要なポイントを、以下に挙げます。

毎日の入力を義務化する

工数管理を行う上でポイントの1つは、チームのスタッフに、毎日のペースで工数を入力してもらうことです。プロジェクトによっては、週に1回、月に1回の入力で済ませてしまう場合もあるでしょう。しかし、週1回や月1回の進捗確認では、何かトラブルが発生した際の対処が遅れてしまいます。想定外の事案が発生した際に柔軟な対応をするためにも、チームのスタッフにはできるだけ毎日、工数入力を義務付けることが望ましいでしょう。

工数入力のテンプレートが煩雑だと、スタッフが入力を面倒に感じてしまい、入力漏れが発生してしまう可能性もあります。ツールやテンプレートを活用する際は、スタッフが入力しやすく、簡単に利用できるものを選ぶようにしましょう。

情報共有を定期的に行う

工程表に記載されているデータは、プロジェクトを把握するための重要な情報です。しかし、データの裏にどのような状況があるかを理解し、チームをリードしていくことがプロジェクトマネージャーには求められます。

例えば、作業が計画通りに進んでいない場合、チームスタッフのスキルが足りていない、計画が現実的ではない、など様々な理由が考えられます。そのため、報告会や社内SNSを活用して、チーム内で定期的に情報を共有することが重要です。情報共有を行うことで、工数管理のデータでは見えてこなかったリスクを避けられる可能性があります。

工数管理を実施するために便利なツール

ここでは、実際に工数管理を進めるときに便利なツールをご紹介します。

WBS

WBSのサンプル図

WBSとは、Work Breakdown Structureの略であり、プロジェクト内の作業や工数を落とし込んだ工程表です。WBS内には、プロジェクトに必要な作業、スケジュール、責任者、必要な工数を明記します。作成したWBSは、プロジェクトの計画書やスケジュール管理のためにも活用します。

WBSについての詳細は、こちらのページをご覧ください。

ガントチャート

ガントチャートのサンプル

ガントチャートとは、プロジェクト管理のために用いるツールの1つであり、棒グラフを用いて表します。プロジェクト内の作業それぞれのスケジュール、担当者や進捗状況を管理します。作業の状況が可視化されるため、誰でも簡単に利用できるというメリットがあります。WBSで作成した工程表をベースにガントチャートに落とし込むことで、プロジェクト全体の状況や、どの作業が終わっており、何が終わっていないのかが把握出来るため、プロジェクトを有効に管理することが出来ます。

ガントチャートについての詳細は、こちらのページをご覧ください。

工数管理の活用事例

次に、各業界において、どのように工数管理が活用されているのか、具体例とともにご紹介します。

ソフトウェアメーカー

工数管理を用いることにより、プロジェクト内の管理だけでなく、ボトルネックの把握にも活用できます。例えば、ソフトウェアの開発において、どの作業に多くの工数がかかるのか、事前に予測することができます。

コンサルティング

コンサルティングでは、実際に行った作業量により、クライアントへの請求金額を計算します。そのため、実際に誰が、どれだけ作業を実施したのか管理しておくことで、透明性を保ってクライアントに請求する事ができます。また、コンサルティング業界では、複数の案件を同時に進めていく場合も多いでしょう。そのような場合、案件ごとにかかった時間を正確に把握しておくことで、作業の効率化や生産性の向上に繋げることができます。

製造業

製造業では、工数管理は生産の効率化に活用されます。利益を最大化するためには、工場を常にフル稼働で生産し続けることが最適だとは限りません。季節、イベント、災害などにより製品の需要は常に変化するため、常にフル稼働で製造し続けると大量の在庫を抱えてしまうリスクがあります。そこで活用されるのが工数管理です。工数管理により、最大限稼働させた際の生産量を把握し、生産量を下げる際に抑えるべきプロセスを特定できます。このように、工数管理は計画の実行や管理だけでなく、将来的な生産計画を検討する際にも活用できます。

工数管理の注意点

最後に、工数管理の注意点をご紹介します。

管理すること自体を目的にしない

工数管理を行う目的は、プロジェクトの成功や業務の効率化です。管理すること自体が目的となってしまい、計画と進捗の乖離をただ指摘するだけでは意味がありません。プロジェクトの現状を正確に把握し、具体的な対策を検討するための手段として活用しましょう。

データだけに捉われない

工数管理においては、チーム内の個別のスキルや能力は考慮しないのが一般的です。同程度のスキルを持ったメンバーが集まるチームであっても、作業のスピードに違いが出てくる可能性があります。

例えば、建築現場に5人のエンジニアがいたとします。1時間で2つの図面しか修正できない人もいれば、3つの図面を修正できる人もいるでしょう。そのため、工数管理では、5人の1時間あたりの作業量をはじめに均一化してしまいます。メンバーの個別の能力を取り込むためには、他のツールと照らし合わせたり、調整を行ったりする必要があります。

まとめ

工数管理はプロジェクトマネジメントに必要不可欠な要素で、進捗管理の効率化、チーム内コミュニケーションの活発化、業務の生産性向上に繋がります。工数管理のポイントの1つは、工数の割り出しを綿密に行い、スタッフが日々の工数データを記録しやすい環境を整備することです。スタッフの協力がなければ、プロジェクトマネージャーが工数を正確に把握するのは困難でしょう。


プロジェクト管理の定義や、具体的な活用方法について、プロジェクトマネジメント全体の概要をこちらのページにまとめています。是非ご覧ください。

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