マーケティング チームは、予算やリソースが削減される中、成長目標を達成するために激しいプレッシャーにさらされています。大胆不敵なチーム リーダーは、チームの成功をサポートするためにクリエイティブかつ最先端の方法を模索する必要があります。おそらく、人工知能 (AI) ほどエキサイティングかつ議論の的となっているソリューションはないでしょう。
私たちは長年にわたり、「ロボット」が私たちの仕事生活に及ぼし得る影響について思いを巡らせてきましたが、OpenAI の ChatGPT のような AI 搭載プラットフォームが最近発表され、ついにその日が実現しました。現に、マーケターの 60% 以上がマーケティング活動においてすでに AI の活用を始めていると回答しています。
手動ワークフロー ステップの排除から、チームのコンテンツ検索動作の把握や関連資産の表面化に至るまで、テクノロジーによってチームがより少ない労力でより多くを達成できる可能性は無限大です。それにもかかわらず、マーケターたちは AI が持つ可能性についてようやく理解し始めたばかりなのです。そして、AI を未だ活用したことがない 37% の人々に関しては、「理解や知識不足」が一番の要因となっています。
そこで、最も聡明なマーケティングの専門家 6 名に、チームのリソースを最大限に活用し、最大の効果をもたらすうえで、AI をどのように活用しているのかについてお話しいただきました。また、今後 AI の活用がどのように進化し、マーケターたちの能力とモチベーションが高められていくのかについても考えを共有していただきました。彼らの意見をぜひご覧ください!
専門家のご紹介
リソースを最大限に活用し、最大の効果をもたらすうえで、マーケティング チームは現在 AI をどのように活用していますか?
「私たちのチームにとっては、生成 AI が「アシスタント」として最もうまく機能することがわかりました。
最終的なタスクを AI に丸投げするのではなく、チームを補完するものとして使用するのが最適であるということがわかったのです。そうすることで、チームがより迅速に業務を遂行でき、創造性も向上させることができるからです。
特に、コンテンツ チームでは、2 つの主要領域において生成 AI をほぼ毎日活用しています。1 つは、長編コンテンツのアウトラインを作成し、ライターへと渡す際です。もう 1 つは、ポッドキャストのインタビューをブログ投稿やソーシャル投稿に変換するなどして、オリジナル コンテンツを別の目的で使用する際です。
「その他のチームでは、より臨時的に AI を活用しています。特に ChatGPT は、創造性が停滞していたり、ライターズ ブロックに陥ってしまっている場合などには、非常に役立ちます。少しのプロンプト エンジニアリングが必要ですが、電子メールの件名からウェビナーのタイトルに至るまで、あらゆるものに対する良いインスピレーションを受け、新たな見解を次々と生み出すことができます。ChatGPT との相互作用を通じて、私たちのペルソナに対する理解を深めるためにアイデアを自由に出し合いました。少し意外だったのが、ChatGPT は Google スプレッドシートの数式を書くのに非常に長けているという点です。スプレッドシートを日常的に使用している人々にとって、これは大幅な時間の節約となり、Google スプレッドシートを使い始めたばかりの人々にとっても役立ちます。
「最近、Scribe で自社の AI 製品をリリースしました。私たちはチームとして急速に成長しており、文書作成は重要ですが、誰もがその作業を好んでいるわけではありません。新しいプロセスを構築する際に、Scribe AI を活用して自動的に文書化し、チームと顧客の両方に共有しています。」
- Lindsey Bly 氏、Scribe (スクライブ)、最高マーケティング責任者 (CMO)
「AI は、特に、データ分析、パーソナライズ、要約、およびデモンストレーション用のコンテンツ生成などの分野において、リソースを最大限に活用し大きな効果をもたらすことを目指すビジネスにとって欠かせないツールとして台頭してきました。AI と機械学習ツールは、膨大な量のデータを迅速かつ効率的に処理できます。さらに、これらの洗練されたツールは、特定のデータ プルのクエリを作成することに長けているため、データ分析のプロセスがより一層、合理的かつ効率的になります。
「弊社は AI を使用したコンテンツのパーソナライズに関して複数のテストを実施しましたが、結果は非常に有望なものでした。AI は一般的なコンテンツをさまざまな業界やユース ケースに対応するターゲットに合わせたメッセージに変換することができました。このような方法でコンテンツをカスタマイズできる機能は、コンテンツの魅力を高め、エンゲージメントとコンバージョン率の向上につながります。また、デモ アカウント向けにハイパーパーソナライズされたコンテンツを作成する際にも AI を活用するようになりました。このような AI 生成コンテンツは、潜在顧客のプロファイルにしっかり適合したものであり、デモンストレーションの段階において、関連性の高い、なじみのある体験を提供します。」
- Josh Bean 氏、Zendesk (ゼンデスク)、製品マーケティング部門シニア ディレクター
「AI ツールの能力をテストするために、いくつかの分野において実験を行っています。大規模言語モデル (LLM) が、過去の提案依頼書 (RFP) への回答、企業および製品のコンテンツ、文書へアクセスできるようにし、その LLM を使用して、新しい RFP への回答を生成できればと考えています。もしこれが成功すれば、月に数時間から数日の人的時間を削減することができ、提案内容の質と一貫性も向上させることができるはずです。
「弊社にはデータ サイエンス チームがあり、犯罪傾向や採用統計など、ブロックチェーンで起きていることについて多くの調査を行っていますが、そのようなデータのカスタム カットを依頼されることがよくあります。LLM インターフェースを使うことにより、これを社内チーム向けにセルフサービス化することで、弊社の専有データに対するフロント エンドとして機能するデータを依頼できるかどうかを評価しているところです。これにより、データ サイエンティストの数を増やすことなくカスタム リサーチ製品を拡大し、ビジネス パートナーに対し、より迅速に対応できるようになります。
「さらに、自社のブログ、ポッドキャスト、リサーチ向けにさまざまなカスタム ヘッダー画像を作成しています。Midjourney や DALL-E などのツールによって、ブランド イメージに合ったオリジナル画像を作成できるかどうかをテストしています。従来はストック フォトをこのような目的のためにカスタマイズしていましたが、オリジナル画像の作成はそれよりも好ましいといえます。先ほどもお伝えしたように、理想的な結果は、より良い品質、より迅速な製造プロセス、そして弊社が成長し続けるにつれて必要な人員を減らすことです。」
- Ian Andrews 氏、Chainalysis (チェイナリシス)、最高マーケティング責任者 (CMO)
「私が率いてきたチームでは、シンプルでありながら有意義なサポートを得るために、すでに AI を活用しています。これにより、業務のスピードと品質が向上しています。例えば、動画にキャプションを追加したり、インタビューの文字起こしを行うことで、スタート ラインに立つために必要な事前準備に追われることなく、実際の作業にすぐに着手することができます。これにより、人的作業が加速され、煩わしさから抜け出すことができるのです。
「ソーシャル、電子メール、ランディング ページ、ティーザー、広告などのさまざまなコンテンツを配布する際に必要なすべての支援資産について考えてみてください。作業は、素晴らしいアイデアが一つにまとめられたら終わりではありません。しかし、AI によってこのような短編資産の初稿をより迅速に進め、ライターがさらに速く最終的なソーシャル コンテンツに仕上げるということが、ほんのわずかな時間で叶うのでしょうか?私たちは、まさにそれを目指しているのです。
「そして、多くの人が、効率が良くなるということは必要な人の数が減るということだと述べています。しかし、少なくともクリエイティブの分野においては、これに賛成できません。さらなるコンテンツ、デザイン、ビデオなど、今日のデジタル ランドスケープに対する要求は増え続ける一方であり、思いやりやスマートさを維持しながら、これらすべての品質をさらに高めることが求められます。このようなことに引き続き対応していくためには、効率を向上させる必要があります。」
- Chelsea D’Angelo 氏、Brandfolder、デザインおよびキャンペーン部門ディレクター
「現在、弊社のデジタル マーケティング チームは AI を活用して、マーケティングや製品分析に関連するトピックやキーワードを構築するための SEO の取り組みをサポートしています。AI を活用する前は、キーワード リストの作成は手作業で行われており、複数の関係者による確認やキュレーションが必要な Excel のリストに含まれていました。リストの作成に加え、Moz や Google Trends などの有料サイトにおいてさまざまなリサーチを行う必要があります。
「しかし、AI や ChatGPT のようなツールを活用することにより、トレンドやリストの事前入力を行うことができるため、多くの手順や時間を削減できます。また、弊社のアウトバウンド チームは AI を活用して、ターゲットとする人やその人たちが目指す結果 (ミーティング、再検討、または単なる回答など) を基に、パーソナライズされたアウトリーチの手順を構築する実験を行っています。
- Lauren Volpi 氏、Mixpanel (ミックスパネル)、マーケティング部門副社長
「現在、私たちは Google に提供している非常に洗練されたモデルに基づいて、有料広告側の入札の意思決定を支援するために AI を使用しています。キーワードへの手動による入札や、表面的なコンバージョン イベント (フォーム入力など) の生成を続けるだけでは、もはや十分ではありません。だからこそ、私たちはボトム ファネル ウィン データを使用して、Google AI の入札モデルをトレーニングし、AI に人間ではできない方法で最適なオーディエンスを見つけさせているのです。
「弊社のセールス アウトリーチ チームも、無料トライアルにサインアップした人々に送るコンテンツをカスタマイズするために、AI を活用しています。ユーザーの勤務先、役職、ユース ケースに基づいて、事前に電子メールのスニペットやシーケンスのライブラリを作成し、AI によってそれらをうまく組み合わせ、自動化およびパーソナライズされたアウトリーチを作成することができます。
「そして最後に、クラス最高のランディング ページに基づいてランディング ページや新しいコピーのアイデアを考案するために、最適化チームは AI を活用することができます。これにより、チームは良いスタートを切ることができ、初回テストに関するアイデアを得ることができるため、白紙状態でスタートしなければならないという状況に陥ることはありません。」
- ジョー・ウェラー (Joe Weller)、Smartsheet、需要創出担当副社長
今後、AI によってマーケターたちの能力とモチベーションはどのように向上していくのでしょうか?
「それなりの規模のマーケティング組織において Marketo (マルケト) や Salesforce (セールスフォース) の管理者が必須であるのと同様に、この世代のツールに精通するために時間を費やす人々が今後大いに求められることは間違いないと思います。このような人々は、さらに質の高いプロジェクトをより多く、より効率的に遂行できると思います。反対に、業務プロセスを向上させる方法を学ばない人々は、期待される生産性曲線において遅れを取ることになるでしょう。」
- Ian Andrews 氏、Chainalysis、最高マーケティング責任者 (CMO)
「可能性は無限大です!生成 AI モデルが向上し、より多くのメディアを網羅するにつれ、競争条件は公平化されていくと思います。マーケターたちは、より少ないリソースと予算でキャンペーンを実施することができるかもしれません。これまで、このようなことは現実的に不可能でした。また、ツールの接続、データのクリーニングと評価、インサイトの獲得など、マーケティング オペレーション上の大きな課題への対処にも AI が活用されていくと思います。AI によって、数式やコードの作成、そしてノーコード ツールでの作業がさらに行いやすくなりました。
「AI を活用することで、将来的に、誰でも理想的なマーケティング テクノロジー スタックを簡単に構築できるようになればと思っています。もちろん、特にマーケティング業界において、AI によって仕事が取って代わられるという話はよく耳にしますが、AI を有効に活用する方法を習得した人々にはメリットがあると思います。」
- Lindsey Bly 氏、Scribe、最高マーケティング責任者
「近い将来、チームが日々時間を浪費してきた反復的な日常業務の多くを、引き続き AI が吸収していくことになるとみています。そして、マーケターたちにはより時間的余裕が生まれ、革新的かつ戦略的に結果を最適化することに専念することができると思います。しかし正直なところ、AI は急速に進化・進歩しているため、具体的な将来を予測することは難しくもあります。つい 6 か月前までは誰も ChatGPT について知りませんでしたが、今ではこのツールによって世界全体に変化がもたらされています。
「ですので、マーケターにとっての最善の備えは、できるだけそれについていくことだと思います。近い将来、誰もが AI によってカスタマイズされた電子メールを送るようになり、消費者はそれに対して鈍感になるかもしれません。では、その次に起こり得る進化はどのようなものでしょうか?ただ、じっと待っているだけでは答えは出ません。実際に試してみる必要があります。これにより、マーケターは先手を打ち、将来において AI のすべての利点を享受することができます。」
- ジョー・ウェラー、Smartsheet、需要創出担当副社長
「AI によってマーケティング環境は変化しており、マーケティング専門家たちの役割がより戦略的なものになっていくことが期待されます。AI の性能が向上するにつれて、アイデアの生成やコンテンツの作成など時間のかかるタスクが自動化され、マーケターたちの時間にも余裕が生まれることが予想されます。高度な AI は、膨大な量のデータを分析することで、傾向を特定し、マーケティング戦略を策定することができます。また、AI のコンテンツ作成能力は急速に向上しており、さらに洗練されたターゲットを絞ったコンテンツを生み出すことができるため、マーケターがメッセージ作成に費やす時間を削減できます。
「この進化により、マーケティング マネージャーの役割は、クリエイターから AI によって生成された戦略とコンテンツを洗練させるキュレーターや承認者へと変わっていくかもしれません。これにより、ハイレベルなプランニング、ブランド ストーリーテリング、顧客との感情面でのつながりの構築、AI やデータ サイエンスにおけるスキル向上の機会が広がります。
このような変化をチャレンジではなくチャンスとして受け入れることで、マーケターは AI を活用して自身の役割を向上させ、より戦略的に組織へと貢献できます。
- Josh Bean 氏、Zendesk、製品マーケティング部門シニア ディレクター
「私たちは今、フロンティアに立っています。それは、AI が新しいからではありません。なぜなら、AI は新しいものではないからです。ですが、生成 AI の進歩は最近のことであり、私たちを不安定な新しい領域へと押しやっています。これまで、私たちはタスクを円滑に進め、手作業による手順を排除するために AI を活用してきました。しかし今後は、「考える」ということにおいても生成 AI が活用されていくことになります。ここで注意していただきたいのが、AI が私たちの代わりに考えてくれるわけではないということです。しかし、私たちが過去の経験を参考にするのと同様に、AI は外部の情報を基に、何が正しく、何が間違っているのか方向性を示してくれるのです。
「最近、LinkedIn (リンクトイン) の共同創業者である Reid Hoffman 氏が引用した言葉を耳にしましたが、とても気に入りました。彼はまず、Steve Jobs 氏の「コンピューターは、私たちの知性にとって自転車のようなものだ。」という言葉を引用し、AI は知性の蒸気エンジンであるとなぞらえました。これは、非常に説得力のある考え方だと思います。AI は大きく変わるでしょうか?変わります。AI の使用にはメリットもデメリットもあるでしょうか?おそらくそうでしょう。しかし最終的には、AI をどのように、誰が活用し、どのような制約を設けるのかということを考慮すれば、チャンスはほぼ無限にあると言えるでしょう。」
- Chelsea D’Angelo 氏、Brandfolder、デザインおよびキャンペーン部門ディレクター
チームの能力を高め、より少ない労力でより多くを達成しましょう
今日のマーケティング リーダーたちは AI を活用して、コンテンツのパーソナライズ、ブランド イメージに合った画像の作成、カスタム リサーチの提供などを行うことで、さらに革新的かつ影響力のある方法を見い出し、マーケティングの取り組みを強化しています。しかし、AI の活用は、予算や人員が削減される中でチームを強化するための数ある方法のうちの一つにすぎません。
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