今日の企業にとって、多様性、公平性、インクルージョン (DEI) 問題への重点的な取り組みは、単に望ましいことではなく、ビジネスに欠かせないものとなっています。現在そして未来の顧客と従業員にとって、DEI は大きな関心事です。
総合コミュニケーション エージェンシーの Markstein (マークスタイン) の調査によると、70% の消費者が、自分が支持する企業が社会問題にどのように取り組んでいるかに関心を持っています。また、McKinsey & Company (マッキンゼー・アンド・カンパニー) の調査によると、性自認が女性である回答者の 44%、民族または人種的マイノリティである回答者の 45%、LGBTQ+ の回答者の 50% が、雇用主がインクルーシブなマインドセットに欠けていたことを理由に、求人に応募しなかったり内定を辞退したりしています。
DEI の取り組みを成功させるためには、組織の構造に織り込むことが必要ですが、マーケティング担当者は独自の立場から、組織全体の DEI イニシアチブを支援および推進することが可能です。事実、Smartsheet が 2021 年 6 月に 840 人のナレッジ ワーカーを対象に行った調査では、74% が「DEI は自社のマーケティング組織にとって重要事項である」と回答しています。
以下では、マーケティング担当者がこの取り組みを主導するための 3 つの方法をご紹介します。
多様でインクルーシブなマーケティング コンテンツを作成する
この 1 年間、多くのマーケティング担当者が、人種、性別、LGBTQ+ の平等といった社会問題の支援や変革に尽力してきました。Smartsheet の調査によると、マーケティング担当者の 4 分の 3 以上が、マーケティング コンテンツにおいて DEI を考慮していると回答しています。
またこうした取り組みには資金も投入されています。第 26 回年次 CMO 調査によると、ブランドやマーケティング コミュニケーションの改善を目的とする DEI マーケティング イニシアチブへの支出は 8.8% 増加しています。
差別化を図る方法の 1 つとして効果的なのが、キャンペーンや社内コミュニケーションにおいて、多様な従業員と消費者を表す画像や写真を使用することです。デジタル資産管理 (DAM) システムを使用すると、マーケティング チームは適切な画像をより簡単に検索でき、また公平な表現を確保するために使用状況を追跡できます。どのような人の画像が共有されておらず、どのような人のストーリーが語られていないかをチェックすることが大切です。またデータベースやストック フォト サイトで適切な画像が見つからない場合は、過小評価グループの人々を起用した写真を撮影して使用することも検討してください。
キャンペーンで使用する言葉にも留意する必要があります。CMO の調査によると、マーケティング担当者の 3 分の 2 が、国民の分断を招きかねない言葉遣いに注意を払っています。また、DEI の取り組みをコーポレート コミュニケーションを通じて社内で共有する場合や、Web サイトやソーシャル メディア上の画像やコンテンツを通じて広く発信する場合にも、言葉遣いは大切になります。言葉を最新の状態に保ち、組織全体で一貫して使用するためには、DEI スタイルガイドの作成が効果的です。また言葉は常に進化しているため、ガイドは定期的に更新する必要があります。
多様性に富んだチームを編成してメンバーの声に耳を傾ける
組織内に多様な人々が存在していると、その声に耳を傾けることで、マーケティングにおける多様性の実現が容易になります。この取り組みは、過小評価グループに属するチーム メンバーが安心して意見を表明できる場所を作ることから始まります。
次に、チームを編成および拡大する機会があれば、過小評価グループの人々を積極的に組み入れるようにしてください。まずは人材を調達する範囲を拡大します。たとえばマイノリティの生徒が多い学校に、自社の情報や雇用機会を積極的に売り込むといったことが可能です。
採用にあたっては、候補者に求める条件を考察したうえで、その条件を満たすであろう特定のペルソナを思い浮かべるのではなく、その役割に必要なスキルを定義します。次に採用プロセスにおける偏見の排除に取り組みます。人間は本質的に、性別、人種、学歴などが自分に似通った人に好意を持つ傾向があります。採用担当者が無意識のうちに特定の候補者に偏るのを回避するには、その要因となる可能性がある氏名、学校、住所などの情報を削除して履歴書を匿名化するソフトウェアを使用することが推奨されます。また、より多様な従業員に面接に同席してもらう方法も有効です。このようにすることで、候補者についてより多くのフィードバックを得られるだけでなく、意思決定者が持っている可能性がある無意識の偏見も特定できます。
ベンダーとの関係性においても多様化に努めてください。Smartsheet の調査によると、マーケティング担当者の 65% が、外部パートナーを選定する際に DEI を考慮すると回答しています。外部から入札を募る際は、評価基準に DEI を含めてください。さらに過小評価グループが経営する企業からの見積もりを積極的に求めます。多様なチームを編成できたら、彼らの意見を単に聞くだけでなく、その視点を尊重し、活用することが大切です。
進捗状況を追跡および測定する
ポリシーや戦略を策定できても、道はまだ半ばに過ぎません。組織が正しい方向に進んでいるかどうかを知るためには、進捗状況の追跡が欠かせません。Smartsheet の調査によると、64% のマーケティング担当者が、自分のマーケティング組織が DEI の進捗状況を追跡および測定していると回答しています。
重要業績評価指標 (KPI) を収集して、共同作業管理 (CWM) プラットフォーム上でチームと共有すると、取り組みの可視化により意思決定が促進されます。またこれらのメトリックにより、改善が必要な領域も明らかになります。
特定すべき KPI は、各企業のビジネス戦略によって異なります。たとえば、使用している画像など、コンテンツ内の多様性を追跡することが可能です。DAM プラットフォームを使用すると、資産のパフォーマンスを測定し、どの画像がターゲット市場に対してより効果があるかを判断できます。
採用活動に関しては、リーダー層における多様性の向上を目標に掲げることも検討してください。あるいはより多様な人材プールから採用するという目標を設定したり、プロジェクトに入札した過小評価グループの経営者の数を追跡したりすることも可能です。
DEI は「正しい行い」というだけでなく、ビジネスに利益をもたらします。Boston Consulting Group (ボストン コンサルティング グループ) の調査によると、多様性スコアが平均を上回っている企業は、平均を下回っている企業に比べて、イノベーションを通じてより多くの収益をあげています。イノベーションと創造性は、マーケティング担当者が持つ大きな力です。自社の DEI 活動を先頭に立って推進することで、マーケティング担当者は企業全体の成功にも貢献できます。