総合的品質管理について
総合的品質管理 (TQM) とは、企業が顧客要求事項を遵守することによって組織的な発展を遂げるための管理システムです。顧客要求事項は、各部門のすべての従業員が高い水準を維持し、継続的な改善に努めるときに満たすことができます。シックス シグマ、リーン、ISO など、多くの品質管理システムの前身となるのが総合的品質管理です。
品質管理について
まず、品質とは何でしょうか?それは、製品やサービスの受容性のレベルを示す尺度です。ASQ 品質用語集では、品質管理は「組織に対するコストを最小限に抑えつつ最大限の顧客満足を達成できるようにプロセスを管理しながら、プロセスを改善し続けるための品質管理システムを適用すること」と定義されています。品質管理は、品質計画、品質保証 (欠陥防止)、品質管理 (製品検査や、能力などの要素を含む)、品質改善の 4 つの要素で構成されています。
製品目標や部品検査といった一見当たり前の指針が 20 世紀になって取り入れられたのは、なぜでしょうか?20 世紀に入るまでは、歴史的にそのような状況にならなかったのかもしれません。ニコルス (Nichols) 氏は、この特別な技術革新の背景には、Ford (フォード) の組立ラインのような新しい大量生産技術や、二度の世界大戦による差し迫った資材需要などがあったと考えています。「米軍は、自分たちが購入するすべての製品にある程度の品質を求めました。製品の品質に、兵士の命が文字どおりかかっていたからです。」とニコルス (Nichols) 氏は述べます。「K レーションであろうと弾丸であろうと、これらの戦争は、常に正しいものを得るという考え方に基づく製造革命に拍車をかけました。」
品質管理には統計学が欠かせません。部品を検査するよりも、数値で精度を予測する方がはるかに低コストだからです。また、検査が不便なこともあります。「マクドナルドでは、いちいち試食することなく、すべてのハンバーガーに問題がないことを確認しなければなりません。」とニコルス (Nichols) 氏は言います。
総合的品質管理の原則
総合的品質管理には、プロジェクト マネジメント協会のプロジェクト マネジメント知識体系 (PMBOK: Project Management Body of Knowledge) のような、認められた 1 つの知識体系が存在するわけではありません。また、TQM の手法やツールを導入するための決まったアクションもありません。組織は TQM を自由に展開し、適応させることができるため、その手法の定義はさまざまです。こうした標準化の課題はありますが、以下のような、一般的に受け入れられている原則を挙げることができます。
- 顧客満足度
- 従業員のコミットメント: トレーニングや提案の仕組みを通じて、従業員のエンパワーメントを生み出します。
- 事実に基づいた意思決定: データ収集と統計処理により、チームの作業内容が確実に仕様を遵守するようにします。
- 効果的なコミュニケーション: 組織全体の対話をオープンにします。
- 戦略的思考: 組織の長期的なビジョンに品質を含めます。
- 統合されたシステム: 品質に関する知識や品質原則へのコミットメントといったビジョンを共有することで、企業内のすべての人をつなぎます。大野耐一氏は、サプライヤーさえもシステムの重要な一部であると考えていました。
- プロセス中心: すべてのアクティビティをプロセスに分解し、最適なプロセスを特定して、それを繰り返します。
- 継続的な改善: 従業員一人ひとりが常に、仕事の改善方法を考えている必要があります。
要するに、「最初から常に正しいことをする」ことが TQM の目標なのです。
総合的品質管理の歴史
総合的品質管理という言葉の由来は 1 つではありません。一部の専門家は、品質管理で大きな影響力を持つ 2 人の思想家の書籍、アルマンド・ファイゲンバウムの『Total Quality Control』と石川馨の『日本的品質管理 - TQC とは何か』が、その由来だと考えています。また、品質管理の第一人者であるウィリアム・デミング (William Deming) の提言に従って、米国海軍が「総合的品質管理」と名付けたことに由来すると考える人もいます。TQM が広く受け入れられるようになったのは、1980 年代以降です。
TQM の原則と実践のルーツは、20 世紀初頭まで遡ります。フレデリック・テイラー (Frederick Taylor) が『Principles of Scientific Management (邦題: 科学的管理の原理)』で、不良品が店から出ないように、作業や完成品の検査を一貫して行うことを提唱しました。1920 年代には、さらなる技術革新を遂げます。ウォルター・シューハート (Walter Shewhart) が統計的工程管理を考案し、生産プロセスのどの時点でも品質レベルを予測できるようにしたのです。今日のカンバン方式やアジャイル方式の管理に使われている管理図を作ったのもシューハート (Shewhart) です。
シューハート (Shewhart) の友人であり師匠でもあるウィリアム・デミング (William Deming) は、1920 年代から 1930 年代にかけて統計的工程管理の理論を発展させ、1940 年代初頭には最終的にその理論を使って米国勢調査局を支援しました。非製造業分野で統計的工程管理が利用されたのは、これが初めてです。
日本の品質時代の幕開け
デミング (Deming) をはじめとする米国の品質理論家は、戦後の日本で英雄的な存在となります。戦争で破壊された日本の経済を建て直すために、工程や生産量を改善する方法を日本の産業界に助言したのです。当時、「メイド イン ジャパン」という言葉は粗悪な製品の代名詞でした。1945 年には、電気技師のホーマー・サラゾーン (Homer Sarasohn) が、より良い製品を作るために、ばらつきを抑制し、プロセスを監視することを提唱しています。
その結果、1950 年代には「品質」が日本の製造業のキーワードになりました。経営陣だけでなく、企業のあらゆるレベルで品質が重視されるようになったのです。1960 年代に入ると、「品質サークル」なるものが日本の職場に登場しました。従業員が問題について議論し、解決策を検討する場で、それは経営陣に報告されます。工場の現場から始まった品質サークルは、その他の職能部門にも広がりました。この全社的な品質重視の姿勢が、「総合的品質」という言葉の語源になっているとも考えられます。
米国における総合的品質管理
1970 年代になると、「メイド イン USA」は、もはや誇りの象徴ではなくなりました。第二次世界大戦後、米国の工場で力を入れていたのは大量生産、生産スケジュールの維持、経費節減です。製品の品質欠如が叫ばれるようになるまで、使い勝手や耐久性はあまり重視されていませんでした。日本が産業界の覇権をかけて米国に挑戦し成功すると、今度は米国の産業界が日本の品質向上基準を参考にするようになりました。ウィリアム・デミング (Walter Shewhart)、ジョセフ・ジュラン (Josef Juran)、日本の石川馨などシューハート (Shewhart) の弟子たちが、品質管理への関心を高めていったのです。そして、フィリップ・クロスビー (Philip Crosby) のような有力な実業家たちが、この流れを擁護しました。
TQM は産業界だけで発展してきたように見えますが、その基本的な考え方は、シューハート (Shewhart) とデミング (Deming) の PDCA (計画、実行、評価、改善) モデルを採用した、1980 年代の米国海軍のプロジェクトに負うところがかなりあります。海軍のガイドラインでは、顧客の要件が品質を定義し、継続的な改善が組織全体に浸透しなければならない、という原則が明示されています。海軍がこの手法で成功したことで、TQM は陸軍や沿岸警備隊など、ほかの部隊にも採用されるようになり、最終的には米国政府にも導入されました。1988年、米国連邦議会は、ビジネスにおける品質管理の必要性を強調し、導入に成功した組織に報奨を与えるために米国品質協会を設立しました。
総合的品質管理が世界へ
品質管理は製造業から始まり、TQM は、その後に続く手法と同様、金融、医療などの分野にもうまく適応していきました。トヨタ自動車、Ford (フォード)、Philips Semiconductors (フィリップス セミコンダクターズ) などは、TQM を導入した代表的な企業です。
世界的にはドイツ、フランス、イギリス、トルコなどが TQM 標準を確立しました。しかし 1990 年代になると、TQM はヨーロッパ大陸の多くの国で標準となった ISO (国際標準化機構) や、品質の問題に対応するために 1980 年代に開発された手法のシックス シグマに取って代わられました。とはいえ、ISO やシックス シグマの大部分が、TQM の原則に基づいています。たとえば、シックス シグマの手法である DMAIC (定義、測定、分析、改善、管理) には、PDCA が登場します。2000 年代には、ISO の運営組織が TQM を基本理念として認めるようになりました。TQM は、データ主導の時代のデータ主導の手法で生き続けています。
ウィリアム・デミング (William Deming) と総合的品質管理の原点
品質の価値と追求に関する現在の理解の多くは、ウィリアム・デミング (William Deming) に遡ります。米国の統計学者、エンジニア、経営コンサルタントである同氏は、生産と作業管理における統計の活用について多くの基礎を築きました。1940 年代初頭には、米国勢調査局に統計的工程管理手法を導入しました。ビジネスやサービス分野でこの手法が採用されたのは、これが初めてです。第二次世界大戦中は、戦時中の製造業の計画立案に役立つ統計的手法に関して、米国の企業や政府に助言しました。戦後はダグラス・マッカーサー (Douglas MacArthur) 元帥に招かれ、戦災の評価と復興計画のための国勢調査モデルに関して、日本政府関係者に助言しました。
デミング (Deming) は日本とその文化に真の関心を示し、それは占領軍の中でも際立っていました。日本人がデミング (Deming) を、日本経済に奇跡を起こした人物として尊敬しているのも驚くにはあたりません。
日本の指導者たちは、天然資源に乏しい日本を経済的成功に導くには、世界に製品を輸出する必要があると考えていました。しかし、戦後の日本製品は品質が低いことで知られており、この目標を達成するのは困難でした。そのような中でデミング (Deming) は、日本科学技術連盟 (JUSE、会長: 石川馨) に招かれ再来日し、品質管理について議論し、後の TQM の基礎となる考え方について説明しました。日本製品は、徐々にその使いやすさと耐久性が認められていきます。1960 年、デミング (Deming) は日本の産業界への貢献が認められ、天皇陛下より勲二等瑞宝章を授与されました。そして 1970 年代には、日本の輸出額は米国を上回ります。
一方、米国の製品は設計が悪く、欠陥が多いという評判が立っていました。1940 年の時点でジョセフ・ジュラン (Josef Juran) は、商品の生産と納期が優先され、品質は最終検査に追いやられていることを指摘していました。デミング (Deming) は、終戦と同時に米国の産業界は統計的手法による品質向上に関心を持たなくなると考えていました。皮肉なことに、デミング (Deming) は自分が日本で教えた品質管理の原則を、30 年後の 1970 年代後半から 1980 年代前半にかけて、米国と英国に紹介したのです。1967 年に『Industrial Quality Control』誌に発表した「What Happened In Japan? (日本で起きたこと)」という同氏の論文は、専門家の間では、彼の有名な「14 のポイント」と「PDCA サイクル」の初期バージョンであると考えられています。
デミング (Deming) はもともと品質管理の学術的なサークルではよく知られていましたが、1980 年に NBC の「If Japan Can, Why Can’t We? (日本にできて、なぜ我々にできないのか?)」というドキュメンタリー番組でインタビューされ、一躍脚光を浴びました。この番組でデミング (Deming) は「生産性が向上するのは、賢く働くからで、一生懸命働くからではない。それが総利益であり、数倍にもなる」ことを強調しました。この番組により、デミング (Deming) の別の側面、つまり米国のビジネス界に求められる品質コンサルタントとしての顔も明らかになりました。デミング (Deming) の経営幹部に対する大胆不敵な態度は評判になり、Ford (フォード) の上級スタッフに、品質問題の 85% は経営判断の甘さによるものだと言い放ったことは、語り草となっています。デミング (Deming) を受け入れない会社もありましたが、Ford (フォード) は、フォード トーラスの設計/製造を開始する前に、同氏の提言に従ってユーザー アンケートを実施しました。そして 1992 年、トーラスは米国で販売台数第 1 位となりました。
デミング (Deming) は 1986 年の著書『Out of the Crisis (邦題: 危機からの脱出)』で「マネジメントのための 14 原則」を提示し、翌年 87 歳で米国国家技術賞を受賞します。亡くなる 1993 年には、デミング研究所 を設立しました。
総合的品質管理が組織にとって重要な理由
TQM のツールや原則が力を発揮するには、組織に品質専門部門を設置するよりも、全社を挙げて高い品質を追求する必要がある、とニコルス (Nichols) 氏は言います。たとえば、品質サークルでは、工程に直接携わる人たちがブレインストーミングによりソリューションを見出します。「人は素晴らしいリソースでありながら、十分に活用されていないことが多いものです。人が日々の職場にもたらす価値を、リーダーが認識していないことがよくあります。従業員は問題を解決する方法を知っています。」とニコルス (Nichols) 氏は断言します。ネイティブ リソースの活用に加え、TQM を実践することで、以下のことが可能になります。
- 顧客満足度と顧客ロイヤルティの確保
- 収益および生産性の向上
- 廃棄物や在庫の削減
- 設計の改善
- 市場や規制環境の変化への対応
- 生産性の向上
- 市場イメージの向上
- 欠陥品や無駄の排除
- 雇用の安定化
- 従業員モラルの向上
- コストの削減
- 収益性の向上
品質のコストについて
TQM の基本的な考え方は、「最初から正しく行う方が、やり直すよりも、はるかに低いコストで済む」というものです。また、品質が原因で顧客が製品やブランドを離れると、損失になります。品質を確保するにはコストがかかり、回収できないコストもある、という考え方もあります。ジュラン (Juran)、デミング (Deming)、ファイゲンバウム (Feigenbaum) の考え方はそれぞれ異なっていました。TQM の提唱者にとって、品質のコストとは品質の高い成果物を作らないことで発生するコストであり、このコストには以下の 4 つのカテゴリがあります。
- 査定コスト: 査定コストの対象となるのは、生産サイクル全体における検査とテストです。これには、サプライヤーから受け取った材料が仕様を満たしているかどうか、生産の各段階で製品に問題がないかどうかを確認する作業が含まれます。
- 予防コスト: 予防コストには、効率と安全性を確保するために作業場を適切に設置する、適切なトレーニングを実施する、適切な計画を立てる、レビューを実施する、といった作業が含まれます。予防に関連するアクティビティは、企業の予算の中で最も少ない配分となりやすいものです。
- 外部不良コスト: このカテゴリは製品が市場に出た後に発生する問題に伴うコストに関連し、保証、製品リコール、返品、修理が含まれます。
- 内部不良コスト: 内部不良は、製品が顧客に届く前に発生する問題に伴うコストです。内部不良には、遅延やダウンタイムを引き起こす機械の故障、材料の不良、スクラップ製品の実行、設計の手直しなどがあります。
総合的品質管理モデル
TQM には広く認められた知識体系はありませんが、業界団体や賞など、いくつかの正式なモデルに基づいて組織は取り組みます。
デミング賞は、TQM の実践に功績のあった世界中の企業や個人を表彰するために、1950 年、日本科学技術連盟 (JUSE) によって日本で制定され、リコー、トヨタ自動車、ブリヂストン タイヤなど、多くの企業が受賞しています。
米国連邦議会は、品質に対する認識を高め、品質を追求する米国企業を表彰するために、1987 年にマルコム・ボルドリッジ国家品質賞 (MBNQA) を創設しました。米国国立標準技術研究所 (NIST) が運営するこの賞は、以下の分野で優れた業績を挙げた大企業、中小企業、非営利団体に授与されます。
- 顧客や関係者により高い価値を提供し、組織の持続可能性に貢献する
- 組織全体の有効性と能力を向上させる
- 組織的および個人的な学習を実施する
過去には Chugach School District (チュガッチ学区)、Concordia Publishing House (コンコルディア出版社)、Boeing Mobility (ボーイング モビリティ) などが受賞しています。
European Foundation for Quality Management (EFQM) (欧州品質管理財団) は、ヨーロッパ全体の組織に品質の枠組みを提供するため 1989 年に設立された非営利団体で、EFQM エクセレンス モデルによって、以下の指針を提供しています。
- 顧客への付加価値の提供
- 持続可能な未来の創造
- 組織能力の開発
- 創造性とイノベーションの活用
- ビジョン、インスピレーション、完全性による統率
- 俊敏な管理
- 人材を活かした成功
- 優れた成果の持続
参加組織は、トレーニング ツールや評価ツールを利用できるほか、EFQM エクセレンス アワードに応募することもできます。
国際標準化機構 (ISO9000) は、企業、組織、国境を越えて品質の一貫性を確保するために、部品、プロセス、ドキュメントのガイドラインと仕様を公開しています。
総合的品質管理を実践する方法
20 世紀の品質に対する取り組みの多くは、PDCA が根幹にあります。PDCA が始まったのは 1920 年代です。技術者であり統計学者でもあったウォルター・シューハート (Walter Shewhart) の構想だった PDCA は当初、PDSA (計画、実行、検討、改善) と呼ばれていました。デミング (Deming) はこれを「シューハート サイクル」と呼んで広く普及させましたが、現在ではよく「デミング サイクル」と呼ばれています。
「計画: 計画フェーズは最も重要です。このフェーズで経営陣と従業員は問題を特定し、本当に取り組むべきことは何か、経営陣が気付いていない生産性に関して日々起きていることは何かを確認します。つまり、根本原因を突き止めます。従業員が調査または大まかな追跡によって、問題の発生源を絞り込むこともあります。
実行: 実行フェーズは、解決フェーズです。計画フェーズで特定された問題を解決するための戦略を策定します。ソリューションを実装するのは従業員で、ソリューションが機能しなければ、最初からやり直します。シックス シグマとは異なり、利益を測るというよりも、ソリューションが機能するかどうかを従業員が判断します。
評価: 評価フェーズは『ビフォー アフター』です。つまり、変更後にその効果を確認します。
改善: 改善フェーズは、結果を発表したり文書化したりして『以前はこうだったが、今はこうです。これが新しい方法で、今後取り組むべきことです』と周知することです。」
ニコルス (Nichols) 氏によると、PDCA は基礎的な手法として 2000 年に ISO によって認められました。PDCA はシックス シグマで DMAIC 手法 (定義、測定、分析、改善、定着) として再び登場します。ウォルターズ (Walters) 氏は、TQM が人を重視しているのに対し、シックス シグマはプロセス中心であると指摘します。たとえば、同氏によれば「定義」という用語は人間的要素を排除することで、「測定」という用語はデータに焦点を当てることです。
総合的品質管理、カイゼン、シックス シグマ: いつ、どれを選ぶか?
アイデアやソリューションの源泉として従業員を活用する TQM の手法は、企業にとって有用です。一方、プロセスと測定に焦点を当てることでデータ主導の意思決定を促進するシックス シグマにも、素晴らしいメリットがあります。ウォルターズ (Walters) 氏は、ピーナッツ バターとジェリーのサンドイッチを例に挙げて説明します。
「2 枚のパンにピーナッツ バターとジェリーを順に塗ってから、2 枚のパンではさみます。でも、パンの耳が潰れているかもしれませんし、角が崩れているかもしれません。サンドイッチを手にとったお客様が、パンがベチャベチャになっている、と言うかもしれません。そのプロセスでは、ジェリーを塗りすぎなのか、ピーナッツ バターの種類が間違っているのかは、わかりません。何が問題かわからないから、グループ ミーティングを開いて、お客様から望む反応が得られるまでまた自分が望む受け入れられるレベルの、いわゆる「質の高い商品」になるまでブレインストーミングを行います。」とウォルターズ (Walters) 氏は言います。
しかし、シックス シグマでは、質問が細部にわたります。使用したパンの種類は何ですか?ピーナッツ バターの種類は何ですか?ジェリーの種類は何ですか?
「これこそが、私はメリットだと思います。人に負担がかからず、プロセスに厳密に焦点が当たるのです。」とウォルターズ (Walters) 氏は言います。「プロセスを厳しくすれば、すでに質の高い人材がいるような感じになります。そしてプロセスが同じように繰り返された後、ほかのパフォーマンス上の問題があったとしても、自動的に人間側に立ち戻ることになります。でも、プロセスのことは心配しなくてもよいので、人間側の問題を適切に管理できます。数字は変わらないのですから。」
ウォルターズ (Walters) 氏はさらに「自社製品が競合他社と本質的に同じでも、企業のほとんどがブランド ロイヤルティを高めたいと考えています。」と述べます。「TQM の場合、製品の品質が良ければ、お客様は戻ってきてくれるだろうと考えます。TQM の場合は、お客様が製品を良いと判断するのを待つしかありません。シックス シグマでは、製品がより優れているかどうかを最終的に推測する必要はありません。それは、わかっているのです。市場を正しく認識し、製品がニッチに最適であれば、プロセスの観点から、それが最高の製品であることがわかります。それが、より深い関係につながるのです。」と Walters 氏は言います。
シックス シグマは既存のプロセスに確定的な結果をもたらします。TQM は時間をかけて結果を出すのに役立ちます。では、カイゼンの意義は何でしょうか?カイゼンは日本語で「改善の哲学」を意味する言葉です。これには 5 つの S、つまり「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」が含まれており、英語では Sort (整理)、Set in Order (整頓)、Shine (清掃)、Standardize (標準化)、Sustain (維持) とされています。カイゼンは、仕事場や職場の整理整頓の方法、および仕事や同僚に対する正しい姿勢に関する哲学のようなものと考えられています。
カイゼン活動とは、少人数のチームが短期間 (通常は 1 週間程度) で、改善点を検討および検証する改善活動です。チームはその後、その結果を経営陣に報告します。経営陣はソリューションを定期的に見直して、それがチームに継続的な利益をもたらしているかを確認します。
TQM と同様、カイゼンは企業全体が品質に責任を持ち、改善は継続的でなければならないという観点から取り組みを行います。シックス シグマと比べると、方法論が一般的に希薄ですが、カイゼンはリーン シックス シグマのリーンな (無駄のない) 側面に影響を与える可能性があります。
総合的品質管理の 7 つの基本ツール
専門家によると、TQM の基本ツールは誰でも、たとえ統計学の訓練を受けていなくても、データを収集して、ほとんどの問題および可能なソリューションを明らかにすることができます。以下は、TQM の 7 つの基本ツールです。
- チェック シート: これは 1 種類のデータを長期にわたって収集するための既成のフォームなので、頻繁に繰り返されるデータにのみ有効です。
- パレート図: この図は、問題の 80% は原因の 20% に関連していると仮定した図です。どの問題がどのカテゴリに分類されるかを特定するのに役立ちます。
- 特性要因図: この図では、問題や特性の考えられる原因をすべて可視化し、分類することができます。
- 管理図: 工程や結果が時間の経過とともにどのように変化するかを表すグラフです。
- ヒストグラム棒グラフ: 問題の原因の頻度や、結果がどこに、どのように集まっているかを示します。
- 散布図: X 軸と Y 軸にデータをプロットし、変数の変化に伴って結果がどのように変化するかを示します。
- フロー チャートまたは層別図: プロセス内でさまざまな要因がどのようにつながっているかを示します。
総合的品質管理のキー プレーヤー: 顧客、サプライヤー、従業員
総合的品質管理プログラム、またはその他の改善手法を成功させるには、マネージャーが製品や会社の品質目標を理解する必要があります。そして、その目標を TQM のメリットとともに、会社に伝えなければなりません。製品づくりやプロセスに関する日々の深い知識がある従業員は、重要な役割を担っているからです。
TQM は、包括性を重視する理念です。したがって、TQM の実行には、サプライヤーが非常に重要な役割を担います。材料が基準を満たしていることを保証するには、新しいサプライヤーの入念な調査と、既存のサプライヤーの定期監査が必要です。また、TQM の目標をサプライヤーに伝えることも重要です。
TQM 方程式で最も重要なのが顧客です。結局のところ、TQM は顧客のために存在するのです。営業チームからの明らかなフィードバックは別として、製品やサービスのユーザーである顧客は、成果物が有形であれサービスであれ、その成果物に何を求めているかについての情報を提供してくれます。
総合的品質管理の認定資格
1980 年代から 1990 年代にかけての全盛期以降、TQM はシックス シグマや ISO 9000 にほぼ取って代わられました。「リーンやシックス シグマでは、このような目標を効果的に達成するための手法が非常に明確です。あれやこれやと、さまざまなことを行います。」とニコルス (Nichols) 氏は説明します。同氏は「ISO は世界共通の規格であり、行わなければならないことが明確です。もちろん、それに付随して、TQM の範囲や権限から外れた認定を受けることができます。」と結論付けています 。また、英国で TQM の勢いがなくなったのは、ヨーロッパが 1990 年代に ISO を採用したことが理由であると指摘しています。現在では、TQM の正式なトレーニングはほとんど行われていません。ニコルス (Nichols) 氏は、純粋な TQM に関心のある企業は、ボルドリッジ賞のようなものを目指せると提案しています。
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