今日のリーダーとその組織にとって、スピードとアジリティはかつてなく重要になっています。今やあらゆる種類のビジネスにおいて迅速な行動が不可欠であり、俊敏なチームを率いるには新たな種類のリーダーシップが必要です。
今月初めに開催されたカスタマー カンファレンス Smartsheet ENGAGE の基調講演において、スタンリー・マクリスタル (Stanley McChrystal) 退役大将が語る今日のリーダーのための教訓に、聴衆は熱心に耳を傾けました。米軍および国際部隊の元司令官で、ベストセラー作家、そして McChrystal Group (マクリスタル グループ) の創設者でもある同氏は、リーダーが自分自身および自分が率いるチームを進化させる方法について語りました。
以下では、変化が速く競争の厳しい市場において、現代のリーダーとして成功するために何が必要であるか、マクリスタル (McChrystal) 氏が挙げる 4 つのインサイトをご紹介します。
1. 効率性だけでは不十分
事業運営において効率性は高く評価されますが、同氏は、今日のチームに効率性がもたらす優位性に疑問を投げかけます。今日の世界の複雑さを考えると効率性だけでは不十分で、リーダーとそのチームには適応能力が求められると言います。
同氏は、チームが状況の変化に適応して成果をあげるためには、効率性を多少は犠牲にしなければならない場合もあり、最終的に効果がないものを効率的に行っても意味がないと指摘します。
「複雑化する世界において、適応能力を伴わない効率性は無意味です。」
退役大将スタンリー・マクリスタル (Stanley McChrystal) 氏
2. 何をすべきかを人々に指示しない
同氏によると、人々に共通の目的を与え、チーム内外にわたる信頼関係を築き、共有意識を育むことで、組織内の誰もが承認チェーンを経ることなく行動を起こせるようになります。
多くの場合、何をすべきであるかは現場の人間が最も理解しています。そのためリーダーは、現場で判断を下す権限をチームに与える必要がある、と同氏は言います。ルールに基づく管理は、今日求められている柔軟性に欠けがちで、ときにはルールが物事を成し遂げられない言い訳になります。
この問題への解決策として、同氏は部隊に対して、違法行為や不道徳なことはするな、また隊員の命を粗末にするな、と指示するにとどめ、リーダーに状況を説明することを条件に、組織内の誰もが承認なしに行動を起こせる環境を構築しました。
「命令が間違っていたら、本来与えられるべき命令を遂行しなければなりません。」
退役大将スタンリー・マクリスタル (Stanley McChrystal) 氏
3. 人々に変化を促す
働き方を変える必要があるとわかったら、人々に変化を促す必要があります。大規模な組織改革に取り組んだことのある人なら誰もが経験しているように、人々に変化を促すのは容易でなく、また変化を拒む理由は常に存在しています。
同氏は、リーダーが何かを変えようとするときに直面しがちな 4 つの反対意見とその対処方法を説明しています。
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「今のやり方で問題が生じていないのに、なぜ変更が必要なのか。」物事が最良な状態になくても、人はたいてい現状に満足しているものです。また未知のものより慣れ親しんだものの方が優れているように感じがちです。リーダーは、現在の体制で問題が生じていないとしても、その機能が十分とは言えないこと、また今後も機能し続けるとは限らないことを、人々に気付いてもらう必要があります。リーダーは変化が必要な理由を人々に示さなければなりません。
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「うまくいかなかったらどうするのか。」新しいことへの挑戦には、常に失敗への懸念がつきまといます。新しい手法の導入は、たとえ現在のやり方で問題が生じていたとしても、不安な気持ちを呼び起こしがちです。現在いる場所に問題があるのであれば、たとえより良い場所にたどり着ける保証がなくとも移動すべきであることを、リーダーはチームに理解させる必要があると同氏は言います。
「戦場で敵の砲撃を受けたら、速やかに移動しなければなりません。」
退役大将スタンリー・マクリスタル (Stanley McChrystal) 氏
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「新たな体制に私の居場所はあるのか。」物事が変化するにあたり、人々が新たな体制に自分がどのように適合するのか懸念するのは当然である、と同氏は指摘します。「私たちリーダーの仕事は、彼らがそれを理解するのを助けることです。」と同氏は言います。
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「忙しくて時間がない。」変化が必要な理由や、新たな体制に自分がどのように適合するのかを理解しているように見える人々も、変化を後回しにしようとしがちです。同氏は、変化の緊急性と重要性をチームに理解させて、やるべき業務が他にあろうとも改革に取り組むよう促すことが、リーダーの役目であると述べています。
変化を主導することの難しさを認めたうえで、リーダーらに対して、これまで築いてきたチームとの信頼関係を活用し、変更管理をチームとの対話と捉えるように推奨しています。
4. 環境の醸成に注力する
結局のところリーダーは、自ら実行するのではなく、チーム全員が問題の背景と、問題を解決するために何をすべきかを理解し、そのために必要な権限を与えられる環境の醸成に注力しなければならない、と同氏は言います。
同氏はリーダーらに、自らをチームの環境を育てる庭師と捉えるよう勧めています。庭師の仕事は植物を成長させることではなく、土壌を整え、適切な肥料と水を植物に与え、絶えず雑草を取り除くことである、と同氏は言います。植物にとって最適な生態系を作ることで、庭師は植物の成長を促すことができるのです。
マクリスタル (McChrystal) 氏のリーダーシップ哲学については、ベストセラーとなった同氏の『Team of Teams (邦題: チーム・オブ・チームズ)』と『My Share of the Task』、および新著『Leaders: Myth and Reality』で詳しく知ることができます。