変化には困難が伴います。エンタープライズ内の変更を管理することが、それ自体で 1 つの分野を形成するまでに発展しているのはそのためです。変更管理とは、各個人が組織の変更を進め、それを導入することをサポートするための戦略やプロセスを指します。この場合の変更とは新たな製品ラインの開発の場合も、新しいテクノロジー プラットフォームの導入の場合もあります。
変更を効果的に進める最適な手法については、専門家によって少なくとも 1940 年代から研究されてきました。しかし、最近の研究によれば、組織の変更に直面してその導入を促進する最も効果的な方法は変更自体に焦点を当てるのではなく、変更されないものを強調することです。
意外に感じるかもしれませんが、『Academy of Management (米国経営学会) 』のジャーナルに掲載された研究では、組織内で変更に対する反発が起こる根本原因は従業員が組織のアイデンティティに高い価値を置いていることとされています。しばしば、変更によってアイデンティティが脅かされると感じてしまうのです。「授業員は、組織が変更された後は、自分が価値を感じて共鳴していた組織とは別物になってしまうと危惧しています。そして、変更に関して不明瞭なことが多ければ多いほど、自分が大切にしている組織のアイデンティティに対してそのような脅威を感じてしまうのです。」研究者の Merlijn Venus 氏、Daan Stam 氏、Daan van Knippenberg 氏は『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の記事にそう書いています。
その理論を検証するため、研究者たちは 2 つの実験を行いました。差し迫ったビジネスの変更を継続性のビジョンを強調するメッセージと併せて発表した場合と、変更のみを伝える発表をした場合の結果的な支持レベルを比較したのです。研究者たちはいずれの検証でも、リーダーシップが変更されないものを強調した場合に被験者がより変更を受け入れやすいということを発見しました。
新しいテクノロジーの導入は、多くの企業が従業員による変更への反発を感じている分野の 1 つです。しかし、この研究は業務遂行の新しいプラットフォームを導入しようとしているビジネス リーダーがメッセージを送る際の大きなヒントを提供しています。
1. 新しいツールの馴染みのある部分を強調する
組織の中で最もテクノロジーに詳しい従業員でさえ、新しいツールやプラットフォームの使い方を覚えるのは大変です。多くの場合危惧されているのは、新しいプラットフォームの使い方を覚えるために業務が滞り、その結果反発やフラストレーションが生まれ、プロジェクトが失敗に終わることです。
馴染みのあるインターフェイスを持つ業務遂行プラットフォームを選び、従業員がすでに使用方法を知っている他のツールやアプリケーションと新しいプラットフォームの似ている部分を強調することで、ビジネス リーダーは導入を促進し、組織全体にプラットフォームを定着させることができます。
2. 新しいプラットフォームが、既存のプロジェクトや支持されているツールに置き換わるわけではないことを強調する
新しい業務遂行プラットフォームは従業員の業務の性質を変えるものではなく、主要なタスクを容易に完了できるようにするものです。業務における従業員の主な役割や目的は変わりませんが、新しいプラットフォームによってより効率的かつ効果的に成果を達成できます。たとえば、従業員がプロジェクトに関連するタスクやタイムラインをより視覚的に確認できるようにするツールや、データを活用してより優れた意思決定を迅速に下せるようにするツールは、従業員が既存の目標を達成することを支援するツールに他なりません。
さらに、適切な業務遂行プラットフォームは、従業員がすでに快適に使用していて、便利で有用だと感じている他のツールに置き換わるものではありません。チームで使用しているのが Google Hangouts や Slack などのコミュニケーション アプリの場合も、Salesforce やその他の一般的なエンタープライズ ソリューションなどの CRM ソフトウェアの場合も、新しい業務遂行プラットフォームは、業務を完了するためにすでに使用されているツールとシームレスに統合できる必要があります。新しい業務遂行プラットフォームの役割は、従業員がすでに使い慣れていて満足しているものを置き換えることではなく、異なるツールを結びつけて従業員がそれらのツールから総合的により多くの価値を引き出せるようにすることです。
3. 最終的な目標は変わらず、いくつかの課題が解決されることを従業員に伝える
もちろん、結果が何も変わらないのであれば、新しいソフトウェアを導入することに意味はありません。業務における責任に大きな変更はないことを従業員に伝えることは重要ですが、業務管理ツールはいくつかのルーティン タスクを完全に排除することで、業務における一般的な課題を解決してくれます。Smartsheet の調査では、40% を超える従業員が 1 週間のうち 1 日以上を人力の反復的なタスクに費やしていることが分かりました。そのような作業が必要であることに変わりはありませんが、データ収集、ステータスの更新、承認などの業務を自動化することで、従業員をこの単調ながら避けることのできない負担から解放できます。新しいプラットフォームが導入されれば、従業員は目標の達成にとって真に重要な作業に時間とエネルギーを費やすことができます。
新しい業務遂行プラットフォームは、一部の従業員にとって大きな変更に感じられるはずです。そして管理されなければ、その認識によって導入に遅れが生じる可能性があります。しかし、より共同作業を促進して効率的に作業をするための機会として新しいプラットフォームを提案し、目標と目的は引き続き同じであることを強調することで、従業員は新しいソリューションを熱望するとまではいかなくても受け入れやすくなることが調査によって示唆されています。